ナーチ16

⑳タロ温泉




レイラとクレインは、 レオンの言う通り、ちゃんとタロ アイランドの洞窟風呂に来ていたりする😁


周辺は断崖絶壁の岩場が連なり、それは まさに猛々しい絶景だが、夜の海原ともなれば、また月明かりが

たわめき、しっとりとした面持ちが  うつろう表情を見せていた…


海に張り出した岩風呂の先は、打ち寄せる波が降り注ぐ


「 波が凄くて  手が届きそう 」


湯槽《ゆぶね》の縁に座り、クレインが海を覗いている


「  そんなに近づくな…落ちても知らんぞ  」


一応、心配するレイラを よそに、振り返ったクレインは クスッと笑う


「  何が可笑しい?」


そういっても、貴方はいつも私を助けてくれるから…

「  一緒に 水の中へ落ちたことがあったわね!  」

また海へと視線を落とす


( あなたが 傍《そば》に居てくれると、私はやっぱり心が落ち着く  )


「  ……ふっ  二度とごめんだ  」

そう言いつつ、眼差しは柔らかい


「  そうよね…😞  私はいつも 足手まといね…   」


遠い目をするクレインは、

まるで、海の中に引き込まれて 消えてしまいそうな 儚い物腰…


「 クレイン 」

レイラは、とっさに その腕をつかんで、浴槽に引き込む


「  あっ‼️💦」


か細く頼りなげなクレインの身体がレイラの腕の中に崩れ落ちる


「   …そう思うなら、 一人で無茶はしないことだ…💧   」


触れあう肌の 艶《なまめ》かしい感覚に  戸惑いながらも、

自然と見つめ合うレイラとクレイン


「 レイラ…  」

(  私はとても素直な気持ちになれる…  )


磯に打ち寄せる波の音が、激しく刻む心音をかき消し、優しく吹き込む潮の匂いと夜の匂いが混ざり合い、溶けてゆく…

雄大に広がるナーチの海だけが、そっと二人を見守っていた。



㉑アンクに向かって!

誠たちは、ポニカ旅団の艦《ふね》に乗って、アンクルウォールター星系に向かっていた。


WORLD   ポカニ   Inc.  は、“安心と信頼、世界共生へのかけ橋” を  基本理念に掲げ、都市開発や レジャー産業などを主な事業内容としているホワイト企業だが、


人員派遣、人質交渉、人身売買、武器や難民輸送 など、あらゆる取引のサポートをする、過激派武装集団 ポニカ旅団という裏の顔を持っていた!



フロントデッキにはレイモンの姿がある


「 きっと君なら交渉に応じてくれると信じていたよ!」


『  我々は、ブルー党にも ロットの王室にも、貴方を渡すわけにはいかなかっただけです!』


メインスクリーンに映るユーリは渋い表情を見せた。シートに着いているオブジェとマコトは黙って 事の成り行きを伺う


「 王室は私を殺すつもりだろう  」『  …はい、そのつもりだった と言えるでしょう。確保の段階で生死を問わず、との命令を受けました  』

「  うむ、生きてノェージアの地は踏めぬか…… 」

『  大丈夫です!  しばらくアンクで身を隠し、こちらで すべての処理が済めば、 新しい認証タグをお渡しします。ご家族の事は、お忘れください、そうすれば、またロットに戻れる日も来るでしょう   』

「  …なるほど…。まあ、フォルティナ人の家族など… すぐに忘却の彼方よ…。」

なんとも言えない表情をする 


ユーリはレイモンから、視線をはずしてマコトたちに目を向ける


『  二人とも 長旅になるが、レイモン氏を頼む❗️ 』


了解!と二人が頷いて敬礼した


 『 よい機会だ、オブジェ、しっかりとアンクの風土を味わってくるといい!  』

「 …💧ユーリ、君は大丈夫か? 」 

『 もちろんだ! 私もなるべく早くそっちに向かおう    』


お互いに神妙な顔つきをする、そんな雰囲気を打ち消すのはマコトの役目。


「 アンクはねぇ酒がうまいよ🎵  」


「  ムッ  」また下らないことを!

オブジェは怒るがユーリは笑う


『  アカシャ、変なところには連れていかないように!-w 』


名前を呼ばれ、計器プレートをいじっていたアカシャが顔をあげた


「 はいよ~ マーム《ボス》、ちゃんとボーイたちのガードはするよ🎵   報酬の分は働くさ😃」


『 …💧 着いたら  報告を!』

ユーリはスクリーンから消えた


「ねぇアカシャ、へんなトコってどんなトコ? 」

シートにもたれてマコトがニンマリしている


「 さあね! あたしは良いとこしか 連れてかないよ 😁✨✨

 お客さんっ! 部屋で休んだら?    うちはね、ハイドライブは、 燃料食うから  しないんだ。ユーリの言う通り 長旅になるよ! 」


レイモンに手招きすると、アカシャは通路へと消えてゆく


「  ああ、久しぶりに ゆっくり眠れるな… 」

ため息混じりに呟くレイモン、

マコトたちに  愛想笑いを残し、ゆっくりデッキを後にした







       *                *                  *



アンクルウォールターは 第2ワールプールの中央に位置し、恒星ローラと、6つの惑星、四つの衛星で構成されている。惑星ごとに統治された四つの国からなる連邦共和国だ。

各国は様々な条約で提携しあっているが、それは表向きで内外共に紛争の絶えないのが現状である


「  向こうに着いたら、反乱軍のベース跡を見に行こう  」


コントロールパネルの前で、オブジェが観測衛星からの画像を延々とチェックし続けている

マーキングされた野戦地を次々と映し出し、真剣そのもの


「   はぁ… 💧  反乱軍て。  おたく   ロットのエイジェントみたいね 」

マコトは音楽を選びながら、あっち向いたり、こっち向いたりと呑気にしているが、いつになく声色は落ち着き払い…

「クロプスはさ、ロットやプリスタインのようなトコじゃない。気をつけないと危険だぜ…」

オブジェをこよなく心配しているようだ


「  ?…珍しいな   マコト  」

やっとモニターから目を離し、振り返る


「  ブラッセルのがマシなぐらいじゃん?      ヤバイやつか、イカれたやつしかいないんだから。いつだったかルフィーが ビビってた、  今は あれの意味がよく分かる  💧」

(  お前をそんな所に連れて行きたかないね…  オレは一人が楽だ  )


「  なんだ?  怖いのか? 」

「 …まぁね~💦   」こわいよ~

シートにかじりついて、わざとらしい身震いをする


「 (;¬_¬)  心配ない、向こうでグル軍が出迎えてくれる。  それより、くれぐれも失礼のないようになっ 」

「  なにそれ~ー❗️ 怖がるオレを、 もっと、いたわれよぉ  」

「  はぁ💨    それに、クロプスじゃない…  アリバーハキャフだぞ!」

もう、集中できない、あっちにいけ!


「 えー?アリバーハキャフ?  今、一番 紛争の激しいとこじゃん!」


「  だから、部隊がいるから、ちょうどいいって決まったんじゃないかっ!  お前は何を聞いていたんだ?  」

オブジェは、画面に向き直り、もうマコトに目も向けない


「  はぁ そうねぇ、でも、たとえ ズムトニュウムで できたアイビー軍団がいたとしても、国家を出し抜き、部下を欺き、目的の為なら手段を選ばず!の、チーム長〔ユーリ〕の下じゃねぇ~-w  」安心できませんぜ!だんな!


「  なにが だ? 居心地いい と言ってたやつが…  ユーリは艦《ふね》を一つ 破壊してまで、レイモンの命を守ったんだぞ!  アンクルウォールターの情勢も然《さ》る事ながら、彼の 今後が気にかかる  💦  」


オブジェはパネルキーボードを打つ手を止めて、外を見つめた


「  ハハ    どこのスパイだか、何が目的だか、実際のところ  謎だらけの黒い人だよっ    そんな 遠い目をするほど、心配 要らないでしょ  」

もっと、そういう表情でオレの事を考えてほしいわ~💨


マコトは キャビネットから飲み物を取ってきて、グラスに注ぐと オブジェの側にそっと置く

そして、シートに倒れ込み、くつろぎモードに入った


「マコト、寝るなら部屋にいけ!」


そう言いながらも、置かれたグラスに口をつける

「 ん?  酒じゃないか!💦」


「  w…そーですけど?  何か? お茶が良かったの?  そんなものあるわけないでしょ? 」

そっぽを向いて、酒をあおる

「…💧」

背中には、オブジェの怒りの視線をヒシヒシと感じる


「  💢  さすがのお前も緊張しているのかと思ったら、 騙したな! 

 人が忙しいのに、ただの相手欲しがりか!  」酒なんか飲んでる暇はない!


と言いつつ、ショットグラスの酒を一気に飲み干す


「  飲んでんじゃん-w 」

「  💢💢💨  うるさい!!」

「(´-ω-`)  騙したとか、人聞き悪いよね  」

起き上がると、ニタニタしながら、オブジェの空いたグラスに酒を注《つ》ぐ


「  もう、向こういけっ  」入れなくていい!


「  じゃなに?オレが本気で怯えてたらさぁ    オブジェ、なんか…どーにかしてくれたわけ?  」

伏し目がちにマコトはいう


イラっとするオブジェは、注がれた酒をまた飲み干すと乱暴に置いた


ゴトッ

「  はあ?  私が?、何を どーできるっていうんだ?   甘えるな!💢💢💨 」


「なんでさ、 まったく💧  酒を出されたことが そんなに頭にくんのかねぇ -w  」

どんどん飲んでるくせに💨


「  いいか!アリバーハキャフの治安はどんどん悪化しているんだ!  コアをめぐって、暴徒化したデモ隊が部隊と衝突、それに便乗して、大統領府周辺にロケット弾が撃ち込まれ 更なるテロが続発だ!    反乱軍の大規模な攻勢を受けたのは、これから向かう北東部のガファ地区だぞ!  防衛関連施設も相次いで狙われてるんだ!」


「  ああ、ヤバさ250㌫だね~  濃い味だな🎵    … なんかさぁ、つまみ欲しくない?  」


キャビネットにスナック類を物色しにいくマコト


「   💢 地形やピンマークの所在地を把握し、周辺の警備を強化、万全の態勢で挑《のぞ》む必要がある!

レイモン氏をアリバハ宮にお連れするまで気が抜けないっ、どんな危険があるか分からないんだからな!」


「  焦るなよ~  そんなん、着くまで、まだ時間はたっぷりあるんだぜ  」

マコトはスティックチーズをもって戻ってくる


「 💢  お前のその不真面目さが、妙に腹が立つんだ!!」

差し出されたチーズを食べながら

自らグラスに酒を注《そそ》ぐオブジェ、もうマコトの思うつぼ?


「  食べるくせに~🎶   」

嬉しそうなマコトはオブジェの隣に来て、ターゲット区域を拡大する

「   エルアドル分離独立派グループだっけか?  その潜窟先が このM24~38周辺にあるのは…前の調査で確実 !」

「ガファの?!」


マコトは頷く


「 まず こいつを、グル軍だけじゃなく、政府軍と協力して片付ける!これが消えれば、辺りが一気に塗りつぶされて、不安要素が減るってわけ 」

地区のマークが消去されていく画像、オブジェは食い入るように見つめる

「 そんなことが成功するなら、閣議会にあたって問題は減るが…💦」

「 成功する!する!  なぜなら、いまの時期、連邦議会議員選挙を前に、清浄化を図るはずだから!」


「  そうか、選挙か…なら当局は必ず動くか…」

少し安心したのかシートに深く座って何かを考え込む様子のオブジェ


「  さらに、バーハーラル港の開発プロジェクトが重要なポイント!  このプロジェクトは、当初ロットとブラッセルの主導で、セロルド湾の域外に位置する良港っていうんで、バーハーラルの港湾《こうわん》開発と周辺地域の総合開発を企図《きと》したもんなんだけど。この辺ね!」

区画を色分けして見せる


「…ああ」


「今はブラッセルが、難色を示して撤退しちゃったから、これ以上、ゲリラ戦やテロ行為でプロジェクトを不意にするわけにはいかない、シュムル政権続投の意向があるわけよ!」


「 ……アリの…政治情勢に詳しいな 」

オブジェはグラスを持ったまま、眉を寄せて 瞼を閉じている


「  オレ、これの前は、ずっとアンクだったからさぁ   」

マコトが得意気にDファイルを開けてゆく、そして 振り返ると、

「…って、寝てんじゃん💧 オブジェ 」


「…スー  」

しっかり握ぎられたグラスは、息をするたび、腹の上で 上下する


「 寝るなら部屋にいけ -w 」

オブジェのまねして、呟いてみるが

マコトは、グラスをそっと 取ってデスクに置いた


一瞬のうちに、眠りの淵に落ちた相方の顔を眺める…


起こそうか、それとも、このまま しばらく寝かせておこうか… それとも


「  相変わらず、まつ毛金色… 」 (オレの前で無防備だな  )



パチッ

オブジェが急に目を開ける!


「  はっ!  ( ̄□ ̄;)!!」


「  ?!  マコト!  おまえ!   今、なにをしようとした? 」


「  えぇ?💦  なんも💦  」

「  いや! 今、なにか、しようとしただろ!  私が眠っているのをいいことに、お前は!!」


「  いや、誤解だって❗️ 」

「  💢  激務で 禁欲生活だからって!  私に妙な気を起こすとは、サイテーだな!! 」


「 Σ(Д゚;/)/ええぇ~ー! 」


「  性欲の捌け口にする気か?!   おちおち、うたた寝もできない!!  」


烈火のごとく怒《いか》るオブジェは、立ち上がって 出て行こうとする


「  ちょっと💦   ちょっと待てよ! そんなひどくない?  オレ、まだなんにもしてないのに💦 」


マコトはオブジェの両腕をつかんで離さない。

正面から 珍しく強引だっ


「 はなせ! 何かされてからでは遅い!💦」


「  オブジェ💦  落ち着け!  そんな性欲の捌け口って、口に出すのも、恥ずかしいようなこと  よく言えるな! 」


「  何が恥ずかしい! その通りだろう!   放せ!  汚らわしい!」


「あのさぁ💧 そんなっ💦人をバイ菌かなんかみたいに💧 」


「  じゃ早く放せ! 💢  」

「  オブジェ! 」


互いに徒手《としゅ》で相手を押さえ込もうと、倒れても もみ合うが、やはりマコトはオブジェを痛めつけることはできない


「 イタタタ💦 」

技を決められ、パンパンッと床を叩いた


「 ふん😠💨」

「  -w  言っとくけど、手を抜いたんだぜ、オレはね  」

腕を擦りながらマコトは言う


「  負け惜しみを言うな  」

「  まあ、そう言うことにしとく-w」

「 ……頭を冷やせっ、変態! 」

「  お宅、本当、ムカつくね-w 」

「  ムカついてるのはこっちだ💢    お前が口説いてまわる女たちと、私を一緒にするなっ !」


オブジェの形相に、そこまで自分は嫌われているのか、と打ちのめされる、ダメージが大きすぎて、言い返す気力も削ぎ落とされた

「…💧」もうオレ、死にそう


「  いいか!   今度やったら、二度とお前とは組まないからな!  」


凄まじい剣幕で、言い放つと肩を揺さぶりながら出ていってしまう


取り残されたマコトは、床に転がって天井を眺める


どうせなら…

「 キスくらいしとけば良かった 」