ビクトリアナーチ19

㉔ナーチの夜





「……。」(    ミレイユ ?  )


マ・セローの個室では、クレインと二人、のんびりと酒を酌み交わすレイラがいた。  ふと、ミレイユの声が したような気がして、静かに超感覚的知覚を研ぎ澄ます


「  ?…  どうかした? 」

「……  いや 」(  まさかな…   ふっ、もう  酔いが回ったか  )


クレインが無言でじっと見つめてくるが、ミレイユに呼ばれた気がした、と話すわけにもいかないレイラ、 黙って酒をあおる


「…💦  なんか… シムも置いてきちゃったし、ん…💦  二人だけで、隔離されたみたいな… 。みんなとは行き違いになってしまったのか…    退屈じゃないか? 」

ぎこちない笑顔を向けるクレイン


「  別に…   静かでいい  」


「 …💦  ミレイユたちは…💦  どうしたんだろうな?  イルカの動画とか撮ったかなっ…   」


勘のいいクレインは、きっとレイラは、ミレイユのことを気にかけているのだろうと察していた


「……。」

レイラの方は、ただ黙って 注《つ》がれる酒を飲み干す作業を続ける


「  あいつ《ルフィー》の事だ-w    そんな余裕はなかったろうなぁ   笑  ここに着いたら、真っ先にスキャルバと二人、  あなたを連れに来ると思ったのに… 」


ミレイユとルフィーは、連絡もないまま、まだ戻ってこない

いつものクレインなら、心配し過ぎて、それが怒りに変わったりする頃だ


「 ……。気になるなら、もう部屋にかえって 連絡してみればいい  」

レイラはクールな表情を貫く


「  別に…  私は、チームが絡んだり、危険が及ぶような事がなければ…そんな、うるさく言うつもりはないし💦   全然   気にしてなんか…  」



少しの沈黙…  


レイラが煙草に火をつけ、窓の外に目をやる


港からは タロアイランドへと向かうフェリーの姿がみえる。

桟橋がキラキラとライトアップされ  て、夜の海を華やかに演出していた


やさしくブルーエア〔煙草銘柄〕の薫りが漂う


「  私、好きなの… その匂い 」


プリスタインの温帯地域は、ルチカルフルーチェ《煙草》のバレンシア種の栽培に適していて、肉厚で糖含量《とうがんりょう》が高い、甘味を含む豊かな香りのルチカル葉が育つ。


ブルー エアは、芳醇な香りと深い味わいで、レイラが地球で吸っていたゴールドラインに、もっとも類似する銘柄だ


先進星では、あらゆる薬物を デバイスや、ボディパッチで取り入れるのが主流だが、レイラのように、乾燥した葉を刻んで 巻き紙でくるみ燃やして吸うというCタイプの愛好者も少なくない。


ルチカルフルーチェの本来の美味しさを引き出すのは、やはりこのCタイプではないだろうか。俗にカルと呼ばれている


現にルフィーやスキャルバは、レイラやマコトに影響されて、Cタイプを吸うようになった


ミレイユは、いつもそれを臭いというのだ


「 …変わってるな  」

レイラは何かを思い出しているような様子


「  … 。そう?  」

きっとミレイユのこと 考えてるんでしょう…  私もイオンシュになれそう


クレインは苦笑いしながら、お酒を注《そそ》ぐ


「  うまい酒だな…  」

勢いよく流し込む酒豪のレイラ


「  そうね、このお酒  口あたりがいいから、すごい飲める!  …でも アクセントは足りないか  」ゴクゴク

ルフィーなら、きっと あっさりしすぎだっていうだろうな、  なにせ、あいつはクセのある酒が好きだから… 


「  ……。ふっ  だが、飲みすぎじゃないか?  さほど強くもないくせに  」

今  お前が、思い浮かべたのはルフィーのことだろう


「  💦  貴方だって かなり早いペースで飲んでると思う…💧   」

そんな 何かを見透かすような目で見ないで…



「  そんなことはない  」


「  ううん💦    私と居るとき、貴方はいつも、ものすごく飲んでる!     ただ、私の方がいつも早く潰れるだけ……💧  」


レイラはそれには答えない


何だか 二人は ムキになって飲んでいるような… 


「  どーせ!  早く 潰れて 寝てしまえと思ってるんでしょう-w  」


酒ぐせは悪くないクレイン、独り、何かを呟きながら 、いつの間にか眠りにつくのが落ちだ


「  … お前が酔いに任せていたいだけだろう     私は シラフだろうと問題ない  」

と言いつつ、 ガンガン飲む


「  私は…💦」

私は  お酒なんか飲まなくても…

んん、ちょっと 恥ずかしいような💦  何が?    でも、酔いに任せてるのは、やっぱり 貴方の方だと思う…


ごちゃごちゃ考えながら、色んな表情をするクレインを、珍しくレイラが まじまじと見つめた


「…… じゃ、部屋にもどるか?  」


「  でも、まだ こんなに残ってる  」

クレインは酒ビンをつまむ


「  かせ…   私が飲む  」

「  えっっ💦  そんな💦体に悪いし」


レイラは髪をかきあげて鋭い眼差し

「  院の定例会では いつも、この何倍もの酒を一気に飲むという 洗礼を受ける!  」


何事も難行苦行《なんぎょう くぎよう》で鍛え上げられていると言いたいようだが、クレインは、それが 腑に落ちないと渋い顔をする


「    😒 ちょっと待って  レイラっ 」

「…なんだ?」

「   その、山に登る訓練とか、酒を飲む訓練とか… ? 私といることは、まるで、その あなたのいう 何?トレーニング?」


「  ああ、苦行か  」

あっさりいう


「  そう、それ!  その苦行ってものみたいじゃない 💦  」

私は 、あなたの苦行なのか?( ω-、)


興奮して立ち上がると、頭がグラッとして 固まる、弱っちいクレイン


「  …酒ビンを落とすぞ  」


「💦  ごめんなさい…    少し酔ったみたい…  やっぱり部屋に   」

「  ああ…  私につかまれ  」

レイラは椅子を引いて腕を出した


「  ありがとう、  でも  大丈夫っ! 平気だからっ💦  」


そう言って気丈に振る舞っては みたものの、立ちくらみがする

とっさに レイラの方へ 手を伸ばし、服の裾を そっと掴んだ


「  💦 …やっぱり 手を貸して   なんか、ごめんなさい… 私  」

クレインの足元はフラついている


「   いちいち 謝るな…   」


レイラは、クレインの細い手首を持って自分の腕に絡めた


長い廊下をゆっくりと歩く


「  ちゃんとつかまれ… 」

「 …。」 …(〃ω〃)

武骨だが、優しいレイラの横顔に釘付けになる


「  クレイン… 」

「   な、なに?」(///∇///)💦

「  段差がある 」

「  あ、ああ💦はぃ  」

慌てて、下に目を向けた


「  それと…   別に 苦行ではない  」

「   そ、そう…なの💦  」

クレインは顔をあげる


「   ああ…    」


「 (///∇///) それは…良かった💦 私、本当は、あなたは迷惑してるんじゃないかと…。レオンが変なこといって、面倒〔私〕を押しつけたみたいな…   なんていうか… 💧  」

( あなたはミレイユやみんなと過ごしたいだろうなって… )



「  ……いや、むしろ 気が休まる  」


「  …レイラ 」( …あなたも同じように 感じていてくれたのか…  )


クレインの目からは 自然と涙が溢《こぼ》れた


「  … なんで、私  💦」

恥ずかしそうに笑って 目元をぬぐう


レイラは思わず クレインを引き寄せ、抱き締めた


「… あ、(///∇///) こ、ここは廊下💦  」  


「  かまわない  」

今はただ  こうしたい 


「  酔ってるのね  💦」


「  … ふっ、バカをいうな、お前のせいで 酔いが覚めた…-w   部屋で飲みなおすぞ    」

クレインの手を取り 歩きだす


「  ( ´゚д゚`)エーー!💦」

「  今日は寝られないと思え-w  」

少し意地悪な笑みを浮かべるレイラ


二人の 長い夜は、これから始まる…