惑星バセンジー6

14◆新たな挑戦者ビズラ



磯辺の乱闘は少しずつ移動しながら続いていた。


ミヨシたちが降りてきた山岳地帯を背にするように、回りはゴツゴツした岩が連なる場所に逆戻りだ。


「はぁ、はぁ、」


ユキホは戦いに疲れたと言うだけでなく、明らかに様子が変だった。


さっき刺されたパレポロスの毒がユキホの体に何らかの影響を与えているようだ。


「……。山猿、ダレてるな!左だ!動け!」


そう言いながらも動かなくていいようにユキホの回りをフレイムでガードする。



「(´-ω-`)、竜崎さん! ユキヒョウなんか具合悪いみたい。」


ビシユュュュュールルン


イレクトバーを振り回しなが

ら、心配そうな顔。


「……。私が引きつける、その間に行け。」


「えーー、バラバラになるなんてダメ!一人でそんな無理だよ、自殺行為だよ!」


「ふっ……こんな虫ごときで自殺するつもりはない。」


「でも~( 。゚Д゚。)  」


「お前とあんな状態の山猿など、足手まといだ。」


「そんなっ~(*T^T) 」

「もっと、分かりやすく行ってほしいか? 私の邪魔をするなっ!」


レイラはキツい眼差しを向ける


「 うぅっ。(;o;)」


ミヨシには、レイラの気遣いが伝わって半べそ状態。



「 おいっ、なんか出目金たちが逃げてくぞっ!はあはあ」


出目金=パレポロス

ユキホの指差すほうにパレポロスはバラバラと散ってゆく。


「  やったぁ♪ やったぁ♪

  ユキヒョウ!大丈夫?」


ミヨシはよろけるユキホにかけよった。


「ああ!  なんかあちぃ。まあオレたちの粘り勝ちってことだな!」


汗をぬぐうユキホは辛そうな表情。


「そうだねぇ!なんだかわからないけど、よかったぁ!」


二人は虫を払いながら喜び合う


レイラ「 ……。」


レイラだけは硬直状態でパレポロスの去っていったほうを黙って見つめている




ガァゴゴゴォォォォオオ!!


一瞬の沈黙を破って、岩場の影から、新たなる挑戦者、ビズラたちが、凄まじい吠え声を発しながら表れた!!


「ええええええぇーーー!!」


その見たこともない奇妙なバケモノに声を張り上げ腰を抜かすミヨシ


レイラはとっさに自分たちの回りにフレイムリングを敷いた。


グオオオオガァァァ~ー


ビズラはまったく炎を恐れる様子はない、今にも飛びかかろうと体を揺らしている。


「 はぁはぁ。なんだ、あれっ」


「山猿、まだ動けるうちに、こいつを連れて、とっとと行け! 」


「……  4匹いんぞ、おめぇ、いけるか?」


得体の知れないビズラを前に、毒の回ったユキホの頭には不安がよぎるが……


「  ふっ、いらんお世話だ。」


レイラは不敵な笑みを浮かべる。


極悪非道の黑氷の面構えだ。


いらん、お世話か……そりゃそうだなっとユキホは赤い顔でニヤリとした。


「  じゃぁ、ちゃっちゃと、片付けろよ! あとでな。」


ガタガタ震えているミヨシを抱えると、ユキホは意を決して火の輪を高く飛び越え、ピョンピョンと跳ねるようにその場を離れて行った。


「  りゅうざきさーーん  (;´゚д゚)ゞ  気をつけて~ーー」


かかえられたまま、ミヨシが叫ぶ声がこだまする

15◆レイラとルフィVSハレコーン


北北東の上空で、ルフィーもパレポロスの大群に遭遇していた。


レイラたちを襲った残党だろう。


「  うーわっ!  んだよ、きもちわりぃなぁ!」


しかし連中は超合金のロボにはなんの興味も反応も示さない。

ただ空をすれ違う物体に過ぎないのか、攻撃してくるということはなかった。


バァアファアーーーァァンドゥゥ


ルフィーのほうには『きもちわりぃ』という攻撃の理由があったため、大群を追い回しては電磁ウィールガンを打ちまくり殺しまくった。


パレポロスに先程の勢いはなく、ただ厄介な相手に迷惑し逃げ惑うのみ。


ルフィーは気づくと海岸までやってきていた。

グブォっっ!!  ゲェェェピィィィイイイイ!!


地上ではレイラとビズラの凄まじい戦いが繰り広げられている。

ビズラの悲鳴が炎の中でこだまして、まさに地獄絵図だ。


「?!!  マジかよっ  」


「 ふぅ。」


レイラの体力もかなり限界に来ていた。タフなビズラを相手に最後の力を振り絞る。


ジュブブブシュュユユユーーー!


ビズラも口から液体をほとばしらせながら突進!


ギャゴゴゴゴォォ


レイラは眉をよせる。

両手をおもいっきり打ち鳴らしフレイムを叩き飛ばした!


ビズラの唾液のしぶきに服がシュゥシュゥと音を立てて焦がされる。


レイラ「くっ!」


唇を噛み締めた。


ビズラは赤黒い地獄の炎に飲み込まれながらも立ち止まらない。


トゴォオオオオオ~ー!


空をつんざく地響きのような音とともにバッファルのバルカン サマール砲が火を吹いて、ビズラはお決まりのゲェェェピィィィイ!を言う暇もなく消滅した。


爆風にあおられながらも、

浜に降り立つバッファルに目を見張るレイラ。

「  …… 。(  海か。) 」


ルフィーはバッファルのコックピットから勢いよく浜辺に降り立った。


目の前に広がる波打つ海を見渡す。


プランタマリーナ(人工海)しか知らないルフィーにとって、本物の海は不思議な感じだった。


ブーツが砂に沈み、海水が染みてくる。

それがなんとも言えない。


「……。(何者だ。)」


戦いでちぎれかけた裾をもてあまし、腰の布裁ちに引っ掻けながら

レイラはいぶかしげな表情でルフィーの方に歩いてゆく。


ズブズブズブブブブブゥゥゥゥ!


「?  はっ!」


ルフィーがなにかおかしい!

そう思ったときはもう遅かった。


ブシィ~~ーー!




砂の中から、ぬるぬるとした長い触手が、素早く伸びて、ルフィーの足や腕を捕らえて巻き付いた!


そのまま海へ引きずり込もうと強力な力で引っ張られる!


「  うぅ!💦」


バランスを崩すが、なんとか踏ん張り、慌てて腰の銃へと手をかけた!


ダバァァァアア !

ファアッシャャャャヤヤヤー!


ハレコーンは黒光りした巨体を砂浜から現した!!


その姿はちょっとした丘陵のようであり、ツルリとした皮膚は分厚く、太くて長い尾にはいくつものコブがついている。


まるでエイやマンタのような雰囲気だ。


プハァァァーー!


銃を取りかけたルフィーの腕をハレコーンの触手は、したたか打ちのめし、さらに巻き付いてなぎ倒す!


「  ッう!  くそ!」


ザザザザと引きずられ、もうだめだ!!とルフィーは顔を歪めた!


ピシュュユッ  シャリリリイ~ーー!


ブチブチブチブチブチっっ!!


ものすごい勢いで、空を飛んできたチャクラムがハレコーンの触手をぶったぎる!


  プッシャャャァァァア  


触手がちぎれ、ルフィーは勢いよく飛ばされるが、素早く体勢を立て直し銃に飛び付いた。


「 なんなんだよ、ここは!💦」


青い血を流して潮を吹きながら暴れるハレコーン


レイラは竜裂刀《サケベア》を引き抜いて、ハレコーンに向かっていった。


「!! カッ !」


そしておもいっきり剣を突き立てるが固い。


ハレコーンはレイラをはねつけて剣を刺したたまま、ぐるぐると暴走。


吹き飛ばされたレイラは空を舞い、ひるがえってハレコーンから剣を抜き取って跳びずさる


そしてぐっと姿勢を下げて構えた。


ブブシュュュュウウウヴ~ーー


ハレコーンは気が狂ったように身体を奮わせ、レイラのほうに向かってゆく。


「  ぴゅ~♪ やるじゃねぇか。」


ルフィーはニヤリとして小銃のフロントサイトからハレコーンを狙う


突進してくるハレコーン

構えて動かないレイラ


ルフィーは片目を細め真剣な表情。


クロスラインがハレコーンを捕らえた!!


ビシュュュュユンンンンン~!


ドブゥォオオン、バァアアンン


ハレコーンはぶっ飛んで仰け反る!!ばたんっばたんっと数回あがいたが、

白い腹を出して絶命した。


ラアト5は携帯用小銃で、それほど威力のある銃ではないが、それは戦闘機兵に対する殺傷力であって、生き物であればキラたちのような筋肉肥大する軍用犬等でない限り命中すれば死は免れない。





「……。ふぅ。」


レイラは剣を振るうと静かにさやに収めた。


この竜裂刀《サケベア》は祖父 龍王の形見の品。レイラの最も大切にしている太刀の一つだ。噂では命より大事だと豪語しているらしい。


「 バケモノだらけだな。 ここの住人か?」


立ち上がると砂を払い、チャクラムを拾ってレイラに近づいた。


「  ちがう。」

さすがに疲れ果てた表情のレイラ


「  ふーん。そう言うやつばっかりだ。」


ルフィーはレイラをまじまじと見つめる。


やはり見たこともない服装だった。長い黒髪、切れ長の鋭い瞳、顎のラインのスッキリしたシャープな顔立ち。

美人だが、ぶっちょうヅラだ。


「何をじろじろ見てる。」


「二度も仕留めてやったのに礼も無しかよ。 」


皮肉混じりの言い草とは裏腹に親しみのこもった視線を向ける。


レイラは髪をかき上げ、おっくうそうにルフィーをみた。


「……。人の獲物を横取りしておいて、文句があっても礼など言うか、私は他人などあてにはしない。」


ルフィーの危機を助けた事などはあえて言わない、レイラはとても男らしいのだ。

そして歩き出す。


「  そうかぁ?   おいっ、  まてよ、俺の命の恩人を置いてく気かよ。」


そういうとチャクラムを差し出した。


「 ……。 」


レイラは黙って受けとるとさやの袂につけた。


「 おまえ、どっから来たんだ?  どっか行くとこでもあるのかよ。」


「 ……。二人を先に行かせた。探さないと。 」


「  二人?  二人ってまさか……。」


ルフィーにとっての二人とはミレイユとハチのことである。


「  見たのか?  」


レイラは一応、ユキホとミヨシを心配しているのだ。


「見たっていうか、オレの小艇《ふね》にいる、じゃ、お前も変な穴から来たとか言うやつ?  話を聞いてもよくわからなかったけどよ💧」


「  ああ。気づいたら、ここだった。」


レイラとルフィーは複座型戦闘機に変型したバッファルに乗り、その場を立ち去った。