ユーリたちの緊迫した状況とはうってかわり、レオンたちの方は呑気にスピードボール神殿を観光中だ。
「この辺で写真とりましょぉ~よ~~ん」
「おれ、丸い橙色のもの食べたい!」
「フルーツいっぱいありますね!」
古代建築であるエルピア式の円柱がいくつも立ち並ぶ古めかしい遺跡である。
「パラメリアンを撃破するぜぃ!イヤッハァハァァーーイ!」
この星の創造神といわれるイザルナギオンが祀られている処。
そんな厳かな場所にもかかわらず、お構い無しで写真や動画を撮りまくるエップ。
ユキホはボリボリ何やら食いながら歩き、噴水を見つけたスキャルバたちは水を掛け合って、ふざけたり、重要文化財の意味も価値も分からず、神を敬う信仰心の欠片もないようだ。
「そんなことないわよ!私は十分にわかってるわ!さぁ噴水で終わりになるわよ!さっさと神殿の奥に行きましょう」
スズカが声を張り上げる
「ここをルートに入れたのは、わがL&P連隊総大将レオン・セシールのご先祖様たちが、東の塔を囲む大柱をいくつも寄与し、その名誉で周辺が埋め尽くされてるからよ」
なんと素晴らしいことでしょう!と、みんなで見るためなのよォー~
おーっほっほっほっほっほっ!
「なんだい?そりゃ、先祖とか どーでもよくないかい?」
眉をあげて、つまんなそうにハチが言う。
「いい!いい!どーでもいい!かんけーねぇよぅ!おう!おう!おう!とっとと次いこうぜぇぇえ~お~ぜぇ!」
スキャルバはみんなの心の内側を代弁するかのように叫んでいる
「何をいってるのよ!遥か昔、セシール家は、この 一族の繁栄を願って、はるばるこの地まで祈りを捧げにきたに違いないわ!我々も、来たる次なる遠征に向けて、L&P連隊の活躍と進軍の無事を祈らなければならないわよ!!」
レオンは神殿を見渡す
「先祖がそんなことしていたのね~レオン、ここ、初めてきたわ。柱頭《ちゅうとう》に彫刻されているのはダリアの葉っぱね。」
そんなレオンをスズカは神々しく眺め、
“こういうときこそカメラを回すんでしょ”
とスプラに目で物を言う。
「あ(^o^;)、はいはい!さぁ、スピードボール神殿に佇む美少女!!
ターゲットON!
そのお姿はぁ ~、人種、星域の垣根を越えて民衆を豊かな明日へ導くハイパールーラー! レオン・セシール大尉!これほどの愛らしさと英知とその実力を兼ね備えた司令官がいるでしょうか!まさしく此の方をおいて他にはいないでしょう!」
キャー~ーー!いないでしょう!いいわースプラ!その通り!
喜ぶスズカ!
さささ、レオン祈りを捧げて~ーー!と合図!
レオンはスッと祈りのポーズを決める
動画にカメラに撮りまくる
「なんなの、この猿芝居(-_-#)」
「ノリがいいといってほしいわ-w」
クレインの悪態にウインクで答えるレオン。
「まさに今、祈りを捧げるその姿、やはり血筋がいいというのは、すべてにおいて違いますねぇ~お上品ですよねぇ~」
正統フォルティナ人を忌み嫌うスプラなのに家柄や血統で品格を問うとは思えない、心にもないことが上手に言えるんだなとクレインがムッとしている
「セシール家は名門中の名門ですからねぇ!あ、クレインさんのお宅もなんか どーんと寄贈してるんじゃないんですか?外壁やご神体とか、あるいは塔の1つや2つ贈ってそうですよねぇ。そうなると、神様も喜んじゃってすごい御利益ありそうですねぇ、ブラッセル人たちは、ここで祈り、宝物《ほうもつ》を供え、銀河の侵略を成功させていくという魅惑の報酬を得ていたんですかねぇ~」
さりげなく毒を吐くスプラ
「くだらねぇ…。そんなもんは力で勝ち取るもんだ!しかも、ブラッセル人はすべて総統とダリオスが命だぜ!女神ナミアンなら、まだしも、イザルナギオンなんざ目じゃねぇよ!」
宇宙神話に記されるヴァンブイサン・ダリオスは、炎を司る殺戮の神であるファイア メイの血しぶきより生まれし宇宙最強のバーサーカー!侵略と破壊の魔神と謳われ、その行く先々は常に戦禍によって火の海原と化した。
ブラッセルの祖先はこのダリオス神の子孫と言い伝えられている
「えーーそこんとこ、どーなんですか?クレインさん!」
スプラはルフィーの殺気立つ視線をクレインに受け流す。
「…ここに参拝に来たことはないわ、うちも軍神ダリオスを祀っているけど、イザルナギオンは国造りの神だし大きな存在だと思う。個人的に言うなら、国の在り方に疑問を持ってるし、武力行使は不本意だし、無神論者だし…だいいち神様がいるのなら、こんな世の中になってないだろうと思うし…」
「ふふ」
そっちいっちゃうの?とレオンが頬笑む
「そこはぼくも同感です。平和への願いや祈りはありますがねぇ、クレインさんのおっしゃる通り、こんな世の中ですし神はいないかと…
もちろん無神論者ですし、ていうかロットワイラーは宗教を弾圧してきた時代が長いですからねぇ、今は信仰の自由が確立されてますけど。」
撮影を止めて、真面目に語るスプラ
「信仰だぁ?そんなんじゃねぇーぞ!ヴァンブイサン・ダリオスはな!ブラッセルであり、俺たちそのものだ!ハイッヤァァーーヘッヘェーーイ!!」
「ちょっと興奮しすぎだよ。(*_*)」
ハチは耳を塞ぐ。
神殿に響き渡るのが気持ちいい、スキャルバはいつもより声を張り上げる
「でましたねぇ~!狂信過激派思想!それ、もう一度、テイクツー、お願いします!」
張り切ってカメラを回すスプラの、不意をついて思いきり押さえつけるルフィー
「おい!パラ公やブルゥと一緒にすんな!おれたちにはな、最強ダリオスの血が流れてる!この力量の法則が物を言うんだ、祈ろうが願おうが そんなもん、なんにも変わんねぇんだよ!」
ルフィーの目はギラギラと輝き 殺戮の味を求めるようにワールの紅蓮華の花火を咲かせていた。
「それだよ、それ!それがまさに腐った権威主義者だ!ファシズム!」
スプラは憎むべき象徴とルフィーを睨む
「やかましいわ!クゾガキ!曹長やっちまおうぜ!」
スキャルバは口と同時に手を振り回す
ここでも野次馬が遠巻きにあつまってきていた。
ルフィーはそれを横目にスプラの襟首を掴みあげ 引き寄せた、
「ロットだってな、弱いやつを押さえ込み、同じようなことやってんだ!どっちが本当のトップか、直《じき》にカタを着けるときがくる!」
そう言うと乱暴に突き放す
「ルフィー、神殿でご無礼だぞ!」
クレインが間に入ってくるとスプラはその後ろにサッと隠れてから悪態をついた
「へーそりゃいい!ブラッセルもロットも争い合って自滅してほしいねぇ!」
「てめぇ!どっち付かずで、いつも逃げ道 つくってるチキン野郎め!俺はそういうのが一番気に食わねぇ!」
そうだ!そうだ!とスキャルバも、ヒャーヒャー言っている
「へぇーけっこうですぅ~!頭悪くて気が短い、ぼくもあんたなんか大嫌い!僕はね、常に賢い選択と、切り札を持って行動しているだけですよ!」
「💢ぶっ殺す!こっちこい!」
「へへーん、やなこった!殺すと言われて、はいどうぞっ!て、行くやつ居ませんよ~」
クレインを盾にして、頭だけ、ちょこちょこ覗かせる
「チッ」
「やめろって」
ルフィーはスプラを捕まえようと手を出すがクレインがガードする
「ぜってぇぶん殴る!こっちこい!」
「いいかげんにしろ!」
「うるせぇ!お前も邪魔くせぇ!」
やいやいとやり合っている三人
ミレイユはそれを見て
「レイラ、とめて」
「…殴られた方がいいやつもいるぞ」
「ギロッ そんな人いるわけないでしょ!」
「う…💧」
さあ、もうこれ以上面白い展開は無さそう?
と思うや否や、レオンはスッと三人に近づいた
「えい!」技あり!
クレインの手を掴むと足を掬《すく》い掛け、素早く突き飛ばす。
「あ💦( *゚A゚)、なにするの!!」
倒れ込むクレインをルフィーは、しっかり抱きかかえた
スプラも側に駆け寄る
「💢危ないじゃないか!」
クレインはルフィーの腕の中で、文句を言う。
「ごめーん!※マスターに習った技を急に試してみたくなっちゃった!」
※レオンに体術の指導をしているオブジェのことだ
「よく言うぜ💦」
ルフィーは苦笑い(;^ω^)
にっこり笑顔でレオンは三人を見下ろす…というか、見下すが適当かもしれない。
「ブラッセルとロットの火種はパラメールね! この問題を実直に解決し、和平維持に特化した駐留を強調、人々の人道的、治安的、平和と安全に努める、よってブラッセルは銀河連合の公約を守り、絆を確固たるものにするってわけ!」
「そうねぇ!レオン!!」
頷きながらガチ惚れの表情をさせてスズカが飛んでくる
「骨のないのロットワイラーと、脳ミソ スッカッスカのブラッセルをレオンがしっかりまとめて見せるわ!!」
キラリーン!!🌠
かわいいレオンがポージング!
「流石だわ!!素晴らしすぎ!もう、わが司令官最高よぉぉ!」
(〃ω〃)ρ( ^o^)b_♪♪
キャーキャーといいながら、クレインたち 放置で、いってしまうスズカたち。
なんじゃかんじゃと他のみんなも、その後にぞろぞろと従う
「…」
(そうやって、いいつもりになって、レオン、あなたの成果には必ず犠牲があるというのに)
クレインはひねった足を擦る
「大丈夫?」
心配してミレイユが側にきた
「ええ、なんともないわ」
「……。」
サッと足から手を離すクレインの様子を遠目からレイラが見ていた。
「意外や意外、レオンさんは顔に似合わず乱暴者ですねぇ」
ぐいぐい輪に入ってくるスプラを殴るポーズで追い払うルフィー
「うひゃっ」ヘ(≧▽≦ヘ)♪
今度はミレイユの後ろに逃げこむスプラ
「ルフィー!」(`Δ´)
キツい表情で睨んでもミレイユは可愛いい。
ルフィーは可愛すぎて直視できないヘタレだから当然のように目を反らした。
「やんねぇよ…💧」
クレインに目をやると、情けないなと笑われているように思え、レイラのほうに助けを求める、毎度のことだ
「行こうぜ!リュウ」
「ふっ…ああ」
レイラはいつも黙ってルフィーを援護した
「 スプラ、お前もこいよ!トランス《から》に隠《こも》ってないで、仲良くしようぜ!」ニヤ
ルフィーはがっちりとスプラの首に腕を回すとニヤニヤしている。
「え~~!本当ですかぁ~なんか嫌だなぁ」
ミレイユに近づいた図々しいスプラをそのままにして行くことはできない!
ぐいぐいと力が入るルフィー
「とっとと歩け」
レイラがドンと肩で押す
「ハハっっ なんか怖いなぁ~💦」
クレインとミレイユも三人の後をゆっくりと続く
「なんかルフィーのやつ、悪い顔してたけど大丈夫か?」
クレインは心配するが、ミレイユのほうは、仲良くしようとして偉いわルフィー!と、思い込んでニコニコしている、アホである
「レイラも一緒だし、平気よ。スプラも もっとみんなとお話ししたりして、仲良くなれるといいわよね…」
なにやら語尾に哀愁のようなものがある
そんな少し寂しげなミレイユを放っておけないのがクレインだ。
「ミレイユ? どうしたの?ユーリとお話しできたんでしょう?オブジェたち活躍してるって?」
何か自分のできることを探す、お節介なクレイン
「うーん…なんか、丁度、忙しくなっちゃったみたいで…話せたのは、ほんの数分?いいえ、数十秒だったかも…」
「そ、そうなの、あ、まだ仕事中だったのね!落ち着いたら、きっと、向こうからかけ直してくれるわよ」
ミレイユは単純なので、超特急で明るい笑顔がもどってきた
「Σ!(///∇///)そうね!そうよね!」
「……💧ぁ…」
なにか要らないことを言ってしまったような…へんな期待をさせるだけじゃないか?
寂しげな様子が気の毒で、つい。
でももっと悲しい思いをさせることになったら? どうするんだ!
あ~私はダメだなぁ((T_T))
ミレイユはもう すっかりご機嫌さんで、ユーリの事を一生懸命 語っている、クレインは その横で、にこやかに頷きながら、頭の中ではごちゃごちゃと自分を責め、嘆きながら歩いたとさ。