almighty

【ソーンパス これまでのあらすじ】


ミレイユは、なかなか 抜けられないセクトの歯車の一つに過ぎなかった。しかし豹魔とユキホ、そして、地獄門学院の仲間たちとふれあい、今まで抑圧されていた記憶を取り戻したことをきっかけに、幼き日のユキホたちとの思い出や、長野での惨劇を胸に、愛と正義に目覚めた!


打倒!赤い虎、虎紋呪 祥と SKグループに立ち向かっていくこととなる!


しかし、SKはミレイユのイーオン〔特殊能力〕に対抗する新型シールドドーム、 アルティペンタシルバーを開発!


その上、とうとうユキホまで捕らえられてしまったのだ!


【序章】運命の足音

ダイジェスト版

1.


SKの科学者たちはミレイユのイーオン〔特殊能力〕に対抗するため新型シールドドーム、 アルティペンタシルバーを開発した。


ちょうど近日、目障りだった雪豹《ユキホ》の捕獲にも成功した総帥は、ミレイユが現れるのを両手を広げてじっくり待っていればそれでよかった。





ユキホは個室に監禁されている。


「うう…」


シールドチェーンにがんじがらめにされ、身動きがとれない。


遠くから足音がきこえてきた。


運命の足音か…



コツ、コツ、コツ、コツ、コツ…


だんだん近づいてくる…。


部屋の前で止まる……。


ガチャ


ドアがひらくと、

血吸いコウモリのハチが現れた。


「ふんっ いいザマだねェ…」


ユキホは顔をあげて睨みつけ虚勢を張るのが精一杯だった。


足がふらつく。


実験室で、大量の血液を抜き取られ、spp剤など投与された薬品のせいで思うように歩けないユキホ


「いいとこさっ…」


2,



ミレイユはまだ薄暗い中、電気をつけることもなく、玄関に降り立つ。

「……。」


リビングのソファーに、戦闘服のまま仮眠をとるレイラがいたからだ。


極力、音をたてまいと息をひそめる。


(ユキホを…助けなくては…)

心には一抹の不安がよぎる


ここのところのSKとの衝突で、ひどく過労をみせていた。


「…。起こしちゃった?ごめんなさい💦」


「ふーッ 」

レイラはタバコをくわえて火をつけた。


「昨日からあなた、なにも食べてないし… 何か… みつくろって買ってこようかと思って…」


ミレイユは振り返えらずにいう。

自分の決意が見透かされないように…。


ドアノブを握りしめた。

「必要ない、もうすぐ出掛ける。」


「えっ!こんな時間に?」

ミレイユは振り返る。


「覇駆毅館《はくぎかん》の護衛がある…」


「うそ!今日はまさか、SK本部の襲撃に実行班を動かす日…?」


心配になって部屋に戻ってきたミレイユはそっとレイラに触れた。


「…ふっ、お前は…私に言うことはないのか?」


レイラは刺すような視線をミレイユに向ける。


普段そんな風に、心の奥を掻き分けて、薄絹も剥ぎ取るように見つめることはない。


「レイラ…」


何か感じ取ってる?

ユキホが捕まったことはもう知っているのか?

とにかく、SKに向かおうとしていることは隠さなければ…ミレイユの心はザワザワする。


「私は、あなたが心配なだけ…。」


とりあえず、ここを切り抜けようと、焦るミレイユ。


レイラはまだじっと見ている、

ふー先生の漫画、じっと見てるをよろしくと言いたいのか。


「…だったら、一緒にこい。」


時計に目をやると、レイラはタバコを揉み消し、襟を正して立ち上がる。


「?…私も班に?」


手伝うと言っても、ずっと拒否られていたので驚く。やはり何か見透かされているのか?


レイラは無言で車のキーを差し出した。


「院にいって、師匠をのせたら、埠頭だ。」


言いながら部屋を出る レイラにつられてマンションの通路を一緒に歩く


「えぇ?私は運転手?」

ぷーっとふくれるミレイユ。

どうやら今日は襲撃の日ではないようだ、ちょっとホッとする。


「ああ。私が心配なんだろう?」

意地悪い笑みを浮かべるレイラ


待っていたエレベーターに乗り込む二人


「だめよ、私は…。」


地下駐車場に降り立ち、あっという間に車の前だ。

「ふっ。なぜだ?いいから乗れ。」


珍しく食いついてくるレイラに、ミレイユはもう言ってしまいたい気持ちに駆られる。


運転手といいながら、ミレイユは助手席に乗せられ、レイラはさっさと発進する。



「…💦だから…。私はお買い物にいかなくちゃ、冷蔵庫に何もないし。」


私はユキホを助けに行かなくてはいけないの…。


こんなことしてる場合じゃないのに。まあ、いざとなったら*飛べばいいか、と挙動不審。


*JUMP(瞬間移動)


「…買い物か…なら帰りによってやる。」


まるで竜将星のように強引な態度、さすがいとこなだけあって、似ている?


いつものレイラらしくない…と思うミレイユ。


このまま黒龍院なんかに連れていかれたら、ますます救出に行けなくなるだろう


「ううん、帰りなんて…。止めて!今すぐ行かなきゃいけないのっ!」セールなの!いいものが無くなっちゃう!


ミレイユは叫ぶ!


「どうしてもいくのか?」

ドームイオンだろ…必死だな…


「ええ。」邪魔しないで


レイラは急ハンドルで側道に車をとめた。


「やつは喜ばないぜ。」



レイラは前方を見据えたままミレイユを見ない。

悲しい顔をしているのが分かるからだ。


「いいえ、これは私の問題なの…私がくるのを祥は待っているんだわ。」


「……。」

避けては通れぬ道なのか…

レイラは黙って車を発進させる


「レイラ!」


「虎狩りは私の仕事だ!お前一人にさせられない。」


キュキューーウウ!


タイヤを唸らせ、きた道をUターン、急加速してドームへと疾走する。


「ありがとう、レイラ。」


イオンシュたちを捕獲するために作られたアルティペンタシルバー!


人質もいる!


仕掛けられた罠は手強いだろう!


生きて帰れないかもしれない!


それと知りつつ、赤い虎に戦いを挑む!


運命の足音がする……