序章 運命の足音2

3,

征弄常徳中央基地のホール、総事官 不動幽褄飛の一番のお気にいり古代種No.4ディオスクロイのMR流体ホログラムの前。


同盟の使命や官員たちの在り方、DNAクローニングの進歩、如何にイオンシュらのEs細胞が貴重であるか、宇宙や異世界への進出の重大性、オブジェたちは幽褄飛の長すぎる熱弁を聞かされた上で、ミレイユたち捕獲の特命を請けるにいたった。


「はい!」


エージェントたちは散ってゆく


「中に入ってミレイユを見つけたら、私に連絡を!捕まえようなんてバカな考えは起こさないことね!お前たちのかなう相手ではないわよ!」


不気味なほどに静まり返ったドーム周辺、エージェントたちに指示をするスズカのヒステリックな声が響く。


「 あれは欲求不満だな、まったく、インカムいらないね」


「中に入ったら必要になる。」

インカム イヤホンをオフにするマコトをたしなめるオブジェ。


「入り口ないし 笑」


いくら探しても侵入経路が見当たらない。


「どうする?どっか軽く吹き飛ばして入るとか?」

ミヨシもイライラしながら駆けよってくる。


「なにいってるの!命令してないことをしなさんなよ!気づかれたら逃げられるじゃない!」


スピーカーから怒鳴るスズカ、なんでもしっかり聞いています。


「じゃどうするんだよ、入れなかったら、結局つかまえらんないじゃないか!」

ミヨシも負けていません。


「ミヨシ、落ち着け💦」

オブジェがミヨシの腕をつかむ。

だって~とオブジェをみるミヨシ。


「本当!まず自分をウィッグしたら!なんなら私が撃ってやる!」

オブジェとミヨシの総攻撃!


「えーークソガキ坊主ちゃんに責められちゃう!おれ、受けは苦手よ。満足させられないかも-w」

「なんだとぉーー。キモい、今すぐ死ね!死ねー!」

怒り狂うミヨシに喜ぶマコト


「はあ」

インカム切らせておけば良かったとオブジェはため息。





ドームの内壁はアポリスチレン製だが、外壁は大量のドゥコンドル素子を特殊バリケードで覆い、アンテナの役割りを果たしていた。TPDでイーオン回収、整理、電気信号化し、宇宙に排出する。


その為、内部では限りなく無限に強力なイーオンを吸引し続けることができるのだ!


「もう!うるさいわね!いいわ!私がカデッチで衝撃を与えてみる、下がってなさい!!」


ウィッグより、自分のカデッチなら調整ができる!

スズカはそう思い、意を決して、ドームの壁に両手を当てた!


バリバリバリ!!


さぁ、運命の足音は、もう そこまで来ている!





4,

ドーム内の気圧は恐ろしく上昇していった。


外部からの衝撃を受けたせいか、

放出動作がうまく働いていないようだ。


祥とミレイユの繰り出すサイコイディオムのハリケーンは、激しくぶつかり合い、好き放題に暴れているという凄まじい状景。

「…あなたの力はそんなものですか?ふっふっふっふっ。」


総帥はまだ事態に気づいてはいないようだ。


冷やかに微笑み、さらにイーオンを絞り取ろうとミレイユに攻撃を促した。


「 はぁはぁ…」

ミレイユは意識を失いそうになるのを必死で堪えていた。


フォルティウスとやりあっていたレイラは気になって側にくる。


「平気か?ミレイユ、どうした?牽制し合ってたんじゃないのか?」


「  ユキホを連れて、早く、ここを出て。あなたたちが行ったら…私は…もっと戦える…はあはあ」


とてもそんな様子ではない…とミレイユを見るがレイラは黙って行動に移る。



辺り一帯はイーオンが渦巻き、うねりを挙げて激突、行き場を無くして彷徨う巨大な魂のよう


グゴゴゴゴゴぉぉぉぉーー


ブォオオオオーーン



次々と押し寄せ、溢れかえるエネルギーのご馳走をアルティペンタシルバーは食いつくせずに手こずっているようだ…


「ぐるる…」


フォルティウスも主《あるじ》 の腕にすりよってきた。


「フォル、そろそろあなたは外へでなさい。」


フォルティウスの体をいたわり、一瞬 見せるやわらかい眼差し。


心を許せるのは虎だけか。


「ガガァ…」

フォルティウスは古代種の血を引く赤い虎。

祥たち兄妹《きょうだい》に続いて最強イーオンの使い手だ。


ハッチが開いて、さらに通路に出るトビラが上げると、フォルティウスは静かに中に消えていった。


そこか!出口は!

レイラは見逃さない


ドンドン ドンドンドンドン!


ユキホは防護アポリスチレン製の透明パネルでできた頑丈な囲いの中だ。


壁を叩きながら必死に叫んでいる。


「キリコーー!イーオンを使うな!キリコー、キリコー!罠なんだぁ!」


レイラには、ユキホが何をいってるか、まったく聞こえない


「? 何をいってる?防音ガラスか?」


とにかく、この透明な壁を破壊してユキホを連れ出し、ミレイユも引きずって、モンスタードームから脱出しなくては…


ブォオオオオーーゴゴゴゴゴー


愛染明王 顔負けの恐ろしい形相でフレイムを発している


「スゲー顔💧?!」こえー


レイラ自身も敬愛しているので似てると言われたら、きっと喜ぶだろう!


「くっ!!」よろこぶか!


休むことなく破壊に徹する!


ブァハハッッ!!ドオオーー!!


サイコマイクロ波的な攻撃は苦手だったが、必死になって挑戦した。


ユキホは、顔が面白くて、ちょっと笑ったが、体力を吸いとられ苦しそうなレイラを心配する


「よせぇ!ぶっちょうずら!イーオンを使うなって!おれのことはいい!キリコを連れて逃げろよぉぉぉぉーー!!」


「ふん、いくら叫んだって聞こえやしないよ。」


叫ぶユキホを嘲笑うハチ


「…目障りな奴等だ💧集中できない。」


そのせいで壁が打ち砕けないのだ!と思うレイラ。


ちがうから!!


「あぁぁぁ!!」


どがががーーー!ばごごおおーん


「なに?!」

レイラは振り返る!


ミレイユが総帥の攻撃を受けきれずに、吹っ飛ばされた!


ブァフオオオーー❗️

キィィイイイーーー!


レイラは竜裂刀《サケベア》を引き抜いて、総帥に向かって飛びかかってゆく!


ダダッン!!ガギぃぃッーーン!


不意を突かれた総帥は交わしきれずに、スリーヘッドで受けてたつ。


「ふっふっふっふっ、さすがですね、なかなか力強い。いい筋をしています!」


ガァシャャャ~ーー


総帥は振り払う!!


「くっ!!」


しかしレイラはすぐさま激しく打ち込んでゆく、総帥も少し楽しんでいるようだ。


ガァシャ!、がきぃぃん、がきぃぃん、


こごごおぉん、ガツゥン、ガツゥン


あえてイーオンではなく、武器での戦いを繰り広げ、


スリーヘッドと竜裂刀《サケベア》が火花を散らして、激しく美しい戦いの旋律を奏でる!が…


「さぁウォーミングアップはこの辺で終りにしましょうか!」


カッと目を見開くと、レイラを意図も簡単にねじり挙げて、壁に叩きつけた。


「ふっふっふっふっふっふっ」


そして総帥のしなやかな指が巨大なトルネードを操りレイラを襲う!




ブァァン!!


ミレイユは二人の間に立ちふさがり、レイラにバリケードを張った。


「…祥、あなたの相手は私でしょう」


はあはあはあ


しかし立っているのがやっとのミレイユ。


「ミレイユ、大丈夫ですか?無理をすると、心臓が止まりますよ。」


総帥は笑みを浮かべ、指揮者のように両手を動かしている。

後ろに控えるは二つのトルネード!


「どけ!私が殺る。」


ミレイユを自分の後ろに押し戻すレイラ。


「レイラ…」


(どうしたらいいの、このままでは私たち、三人とも死ぬわ…)


壁の向こうでユキホも必死に体当たりしたり、頭を打ち付けて、もがいている!


くそぉぉぉーー!


キリコぉぉ!ぶっちょうずらぁ!

ドウオオォオ~ーゴオオオオ!

ドドドドドドぉぉぉぉーー


とうとう運命の足音が地響きと共に聞こえてきた!!!


ピキィィーーーン!

バキバキバキバキぃいいい


グラグラグラグラ!!!!


外壁に受けた障害でイーオンを抑制しきれなくなったドーム。

激しく揺れ続け、天井から大きな亀裂が地面まで走る!!


どがががーーーぁぁーん!!


「な、な、なんだい?いったい、なんかヤバいんじゃないのかい!」


ハチは慌てて逃げ出そうとするがコントロールパネルは開かない。



ユキホは壊れた壁の隙間から、ミレイユたちのところに飛んでゆく。


「キリコーー!」

「ああ、ユキホ!大丈夫?」

二人は手を取り合う。


「おれは平気だけどよ、ここはキリコたちの力を吸いとるように作られてるんだ!」

「そうだったの!!」

「話は後だ!とにかくでるぞ!」

空中は黄色い光が炸裂している

ゴウゴウと唸りを上げて、暗黒の渦が忍び寄る!


ズルズルズルーー


「きゃぁぁぁあーー!!」


「ああ、キリコ~!」

引きずり込まれたミレイユを助けようとユキホは飲み込まれ、

「くそぉ、何してる、山猿!」

服をつかまれたレイラもまた落ちてゆく。


「待ちなさい!」

駆け込んできたスズカは三人を追って飛び込んだ!


「ええぇーー!ああぁ」


「ミヨシ!!」

後に続いていたミヨシが勢いで行ってしまったので、オブジェとマコトも恐怖の闇黒ホールに身を委ねるしかなかった。


グォォオ~ーーブォォオ

人を飲み込む歓喜の声か!


ウァンウァンと空気が震える


総帥は悲痛な表情をする…


あと少しと言うところで、またもやこの手をすり抜ける…


隣には呆気に取られるハチがいた。


「…後を追いなさい。」


ハチは言われるがまま、うごめく巨大な亜空間に足を踏み入れた。


 

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