ビルボグレイの家には、たくさんの小鳥たちと、毛むくじゃらのビーンズ、固い殻を背負った奇妙な容姿のセトササラ、
そして、それを世話する何人かの下僕(人間)たちが住んでいました。
ビルボグレイ「僕には親鳥がいないんだ。だから、二本の長い枝を持つ大きな下僕にご飯をもらうよ。それに、僕はここにいる鳥たちとは何か違うような…でも大人になったら変わるのかな?」
ビルボグレイは市場の前で拾われた孤児鳥。みんなとの違いを感じながらも、それなりに楽しく過ごしています。
ビルボグレイ「ガンミ、また今日もずっと座ってる気?チョコたちに負けちゃうよ!魅惑の巣材を集めよう!」
ガンミ「もう巣材はいらないわ!大事な卵を温めなきゃ。オトのところはまだまだ魅惑の巣材が必要よ、手伝ってあげなさいよ。」
鳥舎のお掃除の時間は放鳥タイムなのです。開け放った扉から、鳥たちが次々と飛び出して自由に遊びます。
別の部屋で暮らすビルボグレイにとって、この時間はみんなと遊べる楽しい時、特にチームに分かれて競い合う〝魅惑の巣材集め〟は命がけ。
ビルボグレイ「誰よりもいっぱい集めるぞ!」
下僕「いたい、いたい、グレイ、やめなさい。」
人間たちの頭の毛、これはかなりの魅惑の巣材です。
他にも、カーペットのほつれや、ティッシュ、ビーンズの背中の毛むくじゃら、鳥たちの尾っぽの羽まで引っ張ります。
茶坊「まったく! お陰で 尾っぽが はえてこなくなっちゃったよ💢」
家の中のあちこちに、ビルボグレイのお気に入りの場所がありました。
ビルボグレイ「 いいか!みんな、隊長の後に続け!」
洗面所のハンガーはブランコ、居間の棚の上に積まれた箱は基地、台所の網棚は見張り台、窓際のビーンズのサークルはアスレチック、ビルボグレイにとっては、なんだっておもちゃであり、遊び場です。
毎日いろんなイタズラをして、楽しく笑って、すくすくと育ちました。
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そして月日は流れ…夏も終わりに近づいて、
ビーンズ「ふーんちのなっちゃんは、雷鳥が彼女だってよ😃縄張りに連れてきて、いつも一緒にいるらしい。」
ビルボグレイ「へぇ、雷鳥?それってどんなやつ?」
大きく立派に成長したグレイは、いつしか、他の鳥を意識するようになり、自分は何者か、気になるようになりました。
ビルボグレイ「僕と同じ種類の鳥に会いたいなぁ。 この向こうには何があるのかなぁ…」
そして外の世界が、とっても気になるようになりました
ビルボグレイ「それに、もっとすごい巣材があるかもしれない!」
家の中を遊び尽くしたビルボグレイは、毎日、毎日、窓の外を眺めます。
ビーンズ「そんなに大したものなんてありゃしないぜ。」
毛むくじゃらのビーンズはあくびをしながら言いました。
ビルボグレイ「お前はいつも、長い紐を着けて、外に出掛ける時、尻尾をブンブンふって嬉しそうにしてるじゃないか!」
グレイは腑に落ちないという顔で犬のサークルの縁にとまって、網戸越しに広がる向こうの世界を眺めます。
セト「天空には魔物がいる、外界に憧れをいだかせる幻の妖術使い。現実には、そんなところに安息の地などありはせん。」
セトササラは貝殻をこよなく愛し、何かというと すぐその中に引っ込んでしまう用心深いオカヤドカリ。
もう15年以上も生きている長老で
昔は遠い南の島に暮らしていたそうです。
ビルボグレイ「その南の島に、また行ってみたいって思わないの?」
セトササラは砂粒を摘まんで、ヤシの実の家に飾りながら、
セト「そんなものは夢、アシャーマサンハ夢じゃ。」
グレイにはセトササラの言ってる意味がよくわかりません
ビルボグレイ「?…セトさんはなにを言ってるの?」
グレイはビーンズに訊ねます。
ビーンズ「おれが知るか」
ビーンズはお気に入りのタオルケットに頭をつっこんでゴソゴソやっています。
グレイはまた外へ、遠い目を向けました。
そこには、いつも遊びに来る小鳥たちが、人間のまいた粟をついばみながら、おしゃべりしています。
〝そうなの、カラスは卵を取られて、その仕返しよ〟
〝それで黒い子猫は殺された?〟
噂話が大好きな雀たちです。
ビルボグレイ「楽しそうだよなぁ 」
楽しい話ではありません…が。
広い大空で自由に羽ばたいて、魅惑の巣材を集めたり、鳥たちと戯れる、そんな光景を思い描くビルボグレイ。
ビルボグレイ「ああ、素晴らしい🎵」
〝君は野鳥だ、野鳥の若者、海辺も山辺もスイスイスイ🎵〟
妄想の中の 小鳥たちは歌い、青空の白い雲は手招きします。
うっとりするビルボグレイはもう居ても立ってもいられません。
ビルボグレイ「よーし、決めた!」
ここを出て外の世界を見に行くんだ!
飛び出すんだ!!!
冒険だ!男のロマンだ。
魅惑の巣材を探しに行くぞ!
外にはもっとすごいモノがあるに違いない‼️
ビルボグレイ「ガンミのやつをビックリさせてやる‼️」
ピピピーーーィィーィ!!
グレイは押さえきれない胸の高鳴りに、部屋中をビュンビュン飛び回り大声でさえずります
下僕「なにを騒いでるんだい?水浴びがしたいのかい?野菜が食べたいのかい?」
何も知らない人間は、水道の蛇口をひねり、シンクの中で手を広げます。
ビルボグレイ「まあ、いっか、ひとっ風呂浴びよう🎵」
ビルボグレイはご機嫌に、水浴びを終えると見張り台で毛ずくろいをします。
下僕は冷蔵庫から小松菜を出して、細かくちぎり、ビルボグレイの口へと運びます。
いつもの日課のようです。
ビルボグレイ「うむ、苦しゅうない。でも、どっちかと言うと僕は葉っぱより茎の方が好き。」
下僕の肩に悠然と乗っかって、葉っぱをムシャムシャ食べながら、やっぱりグレイは窓の外へと想いを巡らします。
あそこには、
僕と同じ鳥もいるはず、そして僕の雷鳥(彼女)にも出会えるかも💕
きっと楽しいものがいっぱいある!
僕は必ず冒険に出るぞ!
そう固く決意するビルボグレイでした。
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ビルボグレイが決心してから、そ
う遠くないある朝のこと、
チャンスが訪れたのです。
ビルボグレイ「それ!今だ!」
下僕の一人が部屋のドアを開けた瞬間です!
ビーンズ「大変だ~グレイのやつが飛び出したぞ~💦」
〝ワン、ワン、ワン〟
ビーンズが騒ぎ立てる中、
ビルボグレイは猛スピードで下僕の脇をかいくぐり、廊下に出ると、タイミングよく開いたドアから外へ向かって飛び出しました!
〝グレイが飛んでいっちゃったぁ!!〟
人間たちが口々に大声で何かいってます。
セト「…天空の魔物に障やられたな。」
セトササラはおもちゃのヤシの木の上で空を睨みます。
下僕「グレーイ❗️グレーイ❗️」
ビルボグレイは振り返えることもなく、力強く羽ばたいて、そのまま一気に、大空に舞い上がっていきました。
ビルボグレイ「これが空の中、これが自由!」
広く青い空には壁も天井もなく、羽ばたく翼を遮るものなど何一つありません。
ビルボグレイはただ夢中になって飛びました。
ビルボグレイ「楽しい~🎶」
しかし楽しいのもつかの間、大きな影が、バッサバッサとちかづいてきます。
〝おい!ここが誰の縄張りか知ってて、お前は、我が物顔で飛び回ってるのか!〟
影の主は鳶でした。
グレイはその大きさ、ひね曲がった鋭いくちばしと鋭い爪に恐れおののき、急降下して逃げ出しました。
ビルボグレイ「あービックリした。今まで見たこともないような大きいやつだった💦」
さすが外の世界は半端ない。ビルボグレイはそう思いながら、竹藪に入り込みホッと一息です。
すると、ザザザっと笹が揺れる音がして、目の前に鋭い眼差しをした、尾の長い鳥があらわれました。
百舌鳥です。
見た目からは想像もつかない獰猛な鳥です。
〝喜ぶがいいさ、お前さんは丁度100匹目のあたしのコレクションになるんだから…ねぇ!!〟
そういうと羽を広げて、襲いかかってきたのです。捕まれば八つ裂きにされるでしょう
ビルボグレイ「きゃーーっ」
ビルボグレイは慌てて、笹の葉を掻い潜り、ぐにゃぐにゃに飛んで逃げ回りました。
どこをどう飛んだかなんて、ちっとも覚えていません。
ビルボグレイ「はあ、なんて恐ろしいやつ💦 コレクションって、ちょっと気になるけど、よい待遇ではなさそうだ。」
そう殺されて木の枝に吊るされるだけですよ!
グレイはいつのまにか大きな森に来ていました。
葉っぱのモリモリ生い茂った、落ち着けそうな木を見つけ、やれやれと枝に留まります。
ピーーョ!ピーーョ!ピーーョ!耳の中まで、こだまするくらい高音で、けたたましく鳴く鳥がやって来ました。
それは、くちばしの長細い、頭の大きな
ひよどりです。
くわえてきた蝉を足で押さえながら食べ始めます
〝お前と分け合うものなんてないからな!あっちいけ!〟
枝に止まっているだけのビルボグレイに激しく騒ぎ立て追い払おうとします。
ピピーーョ!ピーーーョ!!
ビルボグレイ「…💧まだ何にもいってないのに! ケチだなぁ」
そこに今度は黒い大きな鳥がガァガァと鳴いて、カチカチと嘴を鳴らしながら、姿を現します。
鴉です
〝うるさい、とんがりめ、また騒いでるのか!よそへ行け!行かないとお前の卵もひなもくっちまうぞ!〟
ゲピー
といったかどうかはわかりませんが、ひよどりたちは慌てて飛んでいってしまいました。
カラスはじろじろとグレイを眺め回し、
カラス「あぁ、お前は見たことがあるぞ。鳥天のグレイじゃないか? こんなところで何してる?さては人間の住み家から追い出されたな!」
それは網戸越しから、よく顔を会わせていたカラスでした。時々、下僕たちが何かを投げ与えている姿を見たことがあります。
ビルボグレイ「 違うよ~、 冒険だよ!夢や希望のために、自分で飛び出してきたんだよ!」
ビルボグレイはすごいでしょと、得意気な顔しています。
カラス「冒険?夢や希望だって? (なんだ、それは、うまいものか? それともキラキラひかる綺麗なものか?)」
とにかく、余程いいものなんだなとカラスは思いました。
(食い物に困らず、敵も居ない。いい暮らしを捨ててまで探すものなんだからな。)
ビルボグレイ「 それから、沢山の魅惑の巣材を見つけるためさ!」
僕の居場所!、僕の仲間たち!
ビルボグレイは心の中で叫びます。
カラス「なるほどぉ 、人間に飼われている鳥は考えることが違うなぁ。」
難しい表情でうなずくカラス。
カラス「それじゃ、グレイ、その夢や希望が見つかったら俺にも 1つ分けてくれないか?」
ビルボグレイ「💧あのね、それは自分で手に入れるものだから、あげられるものではないんだよ。」
呆れた顔でカラスを見るビルボグレイ。
カラス「なに!独り占めする気か?ウザいとんがりを追っ払ってやったのに、恩を仇で返すのか?このやろうめ💢💢💨」
鬼のような形相で怒りだすカラス
まったく!!なんてばかだ!
なんにもわかってない!
グレイは呆れて逃げ出しました。
森を抜けると広い大きな池がありました。
ビルボグレイ「わあ、優雅で美しい鳥だなぁ❤️」
そこには、ながーい首とながーい足、そして、これまた、大きくてながーいくちばしを持った鳥、アオサギがいました。
僕の雷鳥にしたい💕
ビルボグレイ「こんにちわ!」
浅瀬をゆっくり歩いていたアオサギにビルボグレイは思わず、声をかけます。
アオサギはギロリと睨んで
〝お前、邪魔だよ。お前の影が揺れて、魚が逃げるだろう!近づくな〟
冷たく言い放ち、ピシャッと水をかけてきました。
グレイは慌てて、その場から離れます。
ビルボグレイ「見た目は美しいけど心は醜いなぁ💦」
芦がゆれる広い草原まで来ると、ビルボグレイはそっと茂みに降り立ちます。
〝お腹すいたなぁ〟
ケッケッケッケッケッ
キーキーキーキー
これはまたひよどりにも負けない金切声で大きな翼を広げた鳥が向かってきます。
巣をまもっているケリでした。
ビルボグレイ「えーーなんなの?💦」
〝大切なたまごがあるんだから!! お前のせいで敵にみつかるよ!どっかいって!!〟
ケッケッケッケッケッ
グレイが一目散に逃げ出したのは言うまでもありません。
ビルボグレイ「はあ。」
ビルボグレイは大きなため息をつきます。
外界には落ち着ける場所なんて ありませんでした。
(この広い世界は自由ではないんだ…。)
家の中に暮らす小鳥たちのようにはいきません。
ビルボグレイ「どこにいっても狙われて、どこにいっても邪魔者扱い、どこにいっても誰かの縄張り、色んな鳥たちが、ひしめき合って、凌ぎを削って暮らしているんだ。」
それが広い外の世界です。
天空の魔物が司るここには、厳しい自然の掟がありました。
〝安息の地などありはせん〟
(こんなところに夢や希望を抱いていたなんて、セトさんの言葉通りだった。)
ビルボグレイは肩を落とす。
皮肉にもポツリポツリと雨が降りだしました。
ビルボグレイ「もう、こんなときに! 誰か水道の蛇口を止めてよ💦」
空から降る水を知らないビルボグレイ。初めての雨に打たれ、羽根がズシリと重くなりました。
森に入れば、また何鳥かが襲ってくるかも知れません。慎重に雨宿りする場所を探します。
ビルボグレイ「今、襲われたら逃げ切る自信がないよ💦」
仕方なくとびまわっている内に、人間たちが、たくさん暮らす住宅街にもどってきたようです。
誰にも文句を言われない、 電線に止まって震えています。
ビルボグレイ「寒いよ((T_T))」
どうしていいか分からず、途方に暮れるビルボグレイ。
こんなときに思い出すのは、いつも側にいた下僕たち。水浴びで濡れすぎた羽もちゃんと拭いてくれたのです。
(きっと人間たちは自分を探しているにちがいない。)
ビルボグレイは下僕と住み慣れた家が恋しくてなりません。
ビルボグレイ「もう💦 お家に帰りたい!」
でもどこをどう帰ればいいか、すっかり道に迷ってしまいました。
〝君がそこにいるなら雨はもうすぐ止むかい?〟
見覚えのある茶色い鳥が飛んできて、同じ電線に止まりました。
雀です。
ビルボグレイ「 ねえ! 僕のうちを知らない?僕のうちを教えてよ!帰り道が分からないんだ((T_T))」
ビルボグレイにとっては見たことのある鳥でしたが、この雀は庭先にたむろす小鳥たちではありません。
雀「はあ?知るわけないよ。だいいち、きみは燕だろ?燕はみんな南の国に旅立つんだろ?君も早く行かないと冬が来るぞ!」
(僕は燕?燕という鳥なの?)
ビルボグレイ「南の国?違うよ!じょうだんじゃない!僕のお家は黄色い旗のあるお家だよ!緑のシェードのあるお家だよ!
小鳥たちがいっぱいいて、毛むくじゃらのビーンズと足がいっぱいあるセトさんがいるんだ!」
涙を溜めて、必死に訴えるビルボグレイです。
しかし雀の方は何を言われてるんだか、さっぱりで、迷惑そうな顔をして、飛び去っていってしまいました。
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ビルボグレイ「 💦僕のお家はどこなんだよ~」
ビルボグレイも後を追うように、さらに住宅街の中に飛び込んでいきました。
そして建物の中に降り立ちます。
そこは狭くコンクリートで囲われたアパートの階段でした。
ビルボグレイ「天井があるから濡れなくて済むし、壁もあるから、なんか落ち着く💧」
グレイは家の中の階段をよく知っていました。人間と一緒に他の家にもいったこともありました。
自然の中の知らない場所よりも、こうした住宅街の方がずっとホッとしたのです。
何よりあっちにいけと追いたててくる鳥たちがいませんでした。
人間「ん?」
そこに見知らぬ人間が通りかかりました。
ビルボグレイ「あー!動く木!人間だ💕 僕はここだよぉ!」
ビルボグレイは同じ形の鳥たちよりも人間に会えたことが喜びでした。
大きな巨人がじっとみてきます。
人間「 お前は…飛べないのかい?怪我してるとか?」
ビルボグレイ「ねぇ!僕のおうちに連れてって!( 。゚Д゚。) お願い!僕の下僕を呼んできて~」
グレイは泣きながら訴えます。
もちろん人間にグレイの言葉は通じません。
少し眺めていたものの、人間はその場を立ち去っていってしまいました。
ビルボグレイ「まってぇぇーー。」
待ってよおおおおお~💦
グレイは必死に叫びます。
ビルボグレイ「僕はおうちに帰りたいんだよぉーー‼️」
もう二度と帰ることはできないのか?ビーンズやセトさんにも会えないのか!孤独に一人のたれ死ぬのか!
(冒険なんか大嫌いだ)
うわーーーん うわーーーん
ビルボグレイは大きな声で泣きました!壁に張りついて泣きじゃくりました。
ガタッン ザクザク
格子戸の開く音がして、人間の足音と声がします。
人間「こっちだよ、こっち。ほら、この鳥さ!」
涙目のビルボグレイが顔を上げると、さっきの人間がもう一人、誰かを連れてもどってきたのです。
下僕「グレイ!! おまえ、こんなところにいたのかい!」
見慣れた下僕の顔がニューッと近づて、
ビルボグレイと下僕は、数秒間、じっと見つめ合いました。
人間「お前の探してた鳥?」
下僕「うん💦ずっと探し回ってたんだよ! ありがとう💦 まさか、こんなところにいたなんて( 。゚Д゚。)」
下僕は目に涙を溢れさせ、ぐちゃぐちゃの泣きべそ状態です。
〝よかった、また会えた〟
ビルボグレイも下僕もそう思いました。
温かい手がグレイをそっと抱き上げました。
ビルボグレイ「ピー~ー‼️遅いじゃないかぁ!僕の下僕!!」
グレイがどれほど喜んだかは想像がつくことでしょう。
こうしてグレイの冒険は終わりました。
住み慣れたあの家に帰ることができたのです。
ビーンズ「ビルボグレイ、よく戻ってきたな🎵もう、帰ってこれないかと思ったぜ、鳥は空に舞い上がると迷子になるって話だからな。」
毛むくじゃらのビーンズがでかいフサフサの尻尾をふって迎えてくれました。
セト「そう。天空の魔物が迷わせるのだ。翼有るものは、よくよく気を付けなくてはならん。」
小さな爪を擦り合わせてお手入れをするセトササラ
ビルボグレイ「ほんと、悪夢と絶望しかなかったよ。でも冒険に出たおかげで見つけたモノもあるんだ。」
ビルボグレイは目を輝かす。
〝ここが僕の家、僕の居場所、姿形はちがくても、いつも一緒に暮らす僕の家族 〟
ビーンズ「え?なんだよ?なんかうまいもんでもあったのか?」
ビルボグレイ「あのね!どっかのバカなカラスみたいなこと言わないでよ」
ビーンズ「なに!俺様をカラスなんかと一緒にすんな!」
〝わん!、わんわん!、わん!〟
下僕「ビーンズ、いけない!!うるさいよ!」
ビーンズは下僕に叱られて、クッションドームの中に引っ込みます。
ビルボグレイ「へへん🎵 やっぱり家が一番だね。」
楽しそうに見えた窓の向こうは、怖いところでした。
その世界には居場所はなく、そこにいる鳥たちは危険な敵でした。
ビルボグレイはもう二度と窓越しに止まって、外を眺めることは無くなりました。
ビルボグレイ「恐ろしくって見たくもないよ~ーーー❗️」
チチチチ~ー高々とさえずりながら、部屋の中を飛び回ります。
下僕「 グレイはまた、大騒ぎだね😃菜っぱあげるから💕おいで、ほら。」
グレイは羽をふるわせて急降下、温かい大きな手に止まり、幸せそうに菜っぱをほうばります。
ビルボグレイ「 でもね、僕はうちの鳥たちの、誰もが経験できないすごい大冒険をしてきたんだよ~🎶」
(二度と行きたくないけとねぇ)
いつか誰かが外の世界に憧れて、冒険に出たいと言い出したら、そこには不安と孤独、そして危険がいっぱいあることを話してやろうと思うのでした。
おしまい