一足先に戻ったハーバはMR2ホロディスプレイでバケットウイルスの塩基配列と抗体k細胞の解体解析をしながら、ユキホのリボ核酸、Esc細胞を検査していた。
「細胞表面の抗原レセプターとして細胞膜結合形の免疫グロブリンを発現。
形質細胞に分化すると分泌形の免疫グロブリンを抗体として産生、
造血幹細胞から分化したのち、脾臓などの二次リンパ組織にも移動
、活性化して抗体産生を開始しています。」
「はあ?(*_*)なんだって? 」
ミレイユとハチはハーバが何をいってるんだか、さっぱりわからない。
「この方は驚異的な幹細胞とR因子群を持っていて、キャナイン6の働きだけで、自ら、抗体細胞を作り出しているようです。」
マウゴラはあわてて補足する。
まあミレイユもハチもユキホのスーパー体質は知っていたので驚くことはなかった。
「ユキホ、頑張ってるのね
( ´△`)偉いわ。」
ただ苦しそうなユキホの姿に涙ぐむミレイユ。
「なんだい、じゃワクチンいらないのかい!必死にサーチしてやったのに。」
「いいえ、抗原体はまだ微量で低速なので、このままでは解毒に大変 時間がかかり、完治するまで何ヵ月も要することになるでしょう。」
マウゴラはディスプレイを眺め、ハーバに振り返る。
「はい、その通りです。血清は必要です。」
「ふーん、ドームじゃ妙な注射を何本打たれても平気な顔してたのに、やわだね。」
どっちにしてもケチつけるのがハチですね。
「パレポロスに刺されたとき、毒だけでなく、バケットウイルスに感染したようです。我が国では、ほぼ死滅した病原体ですが、まれに検疫を通さない産業動物が感染します。」
「産業動物?家畜じゃないか!あははは!やっぱり冬野はドブネズミだからね~あはははは!」
ドブネズミは家畜じゃありませんけど、大喜びして笑い転げるハチ。
「もう!ハチ、静かにして。」
あはははぁ、あはあは、はぁー、静かにできるわけないだろ!と笑い続ける。
自分で検査結果を説明したものの、腑に落ちない様子のハーバ。
「まだ調べる必要はあります。」
ハーバの知る人間たちは、生まれてすぐに抗アレンジルワクチンを投与、出兵する際もz類総合予防接種を受けるので、ほとんど病原体にやられるとこはないのである。
「おい、ハーバ、艇《ふね》のまわりが、ばけもので溢れてきたぜ。どーすんだよ!こいつら!キモいから、ぶっ殺していいか?」
中央モニターにルフィーが現れる。
後ろに写るパネルハウスには、ギギギイイイイと暴れるケファタルト、ポートプールのハレコーンはぶっしゃゃゃーーっと水を吹き、大きなPレン樹脂の袋に詰まったパレポロスはブォンブォンと騒々しく唸っています。
「ダメです、媒体に傷をつけないでください。パネルハウスに木斛《もっこく》ガスをまいて、血清培養度をあげてから、毒保有体を放ちます。」
言いながら、ハーバは外へ向かう。
「すごいね、なんだい、あれ!よく、捕まえたね。」
尾尻を振るうハレコーンはモニター越しでも大迫力だ。
「そうね、大きいわね~」
「しかも、あの体内には、たくさんの毒への抗体が秘められています。この星の生きた化石たちによって、F11がよみがえります。」
「これで、ユキホは良くなるわね!」
「はい、あとはハーバにお任せください。」
こうして治療薬に必要なものはすべて揃った。
「やっと、集中して遊べるね!」
ハチはニヤリとする。
「はい!今のところシティーは守られています。」
「やるね~、監視を続けてたんだね!」
「偵察行きますか?」
「あたい、まだズアイボスのカスタマイズやれてないんだよ((T_T))」
「大体は済ませておきました。あとはあなたの好みの兵器を選ぶだけです!」
「さすがじゃないかぁ」
嬉しそうに笑うハチ、マウゴラのほうも楽しそうだ。
そんな二人の様子に、ミレイユも微笑む。
モニターにはバッファルが戻ってきた姿が写っている
「みんなも帰ってきたわ(^○^)、じゃ、私はご飯を作るわね。」
「やっときたか。ん、そのユニフォーム、なかなか似合うじゃないか~。ふふん🎶」
ラディアが中に入ると、きらびやかな装飾品の数々が目に飛び込む。戦艦の一室とは思えない。
巨大なソファーにどっかりと沈みこんでいるクーネスが、ワイングラスを傾けながら上機嫌な様子だ。
「ありがとうございます💦クーネス様のお陰で…。こんな私がオペレーションに入れるなんて…。嬉しいです。」
「ハハハ!そうか!それは良かった。まあ、ここに座れ。待ちくたびれて、お前と飲むはずの※ヒヒーンサラブレッドが もうすでに無くなるところだ!」
※特別な時にしか飲まないという高級ワインらしい
クーネスは、立ち尽くしたまま動こうとしないラディアの腕を引く。
「あ、クーネスさまっっ。私はまだ勤務中なので💦」
「そんなこと気にするな!お前の部隊入りが建前なことくらい、イーグラだって心得ているさ。」
ラディアは、ルフィーに会いたい一心でバセンジー行きを同行したいとクーネスにおねだりしたのだ。
しかし、ラディアの胸の内を知らないクーネスは、
″そんなに私と居たいのか、可愛い奴め”
とおめでたい妄想にかられている。
勘違い野郎クーネス、強引にラディアをおさえこむ。
「あ、クーネス様💦」
ソファーに押し倒されながらも、ラディアは身を固くして、なんとか起き上がろうともがく。
『クーネス!』
突然、インフォメーションスピーカーから、聞き慣れた金切声がした!イーグラだ。
タイミングが良すぎる。
レオン同様、覗き見システム作動中か?
『本当に援軍を呼ばない気か?やはりバイアラ少佐に報告しないでいいものか!』
イーグラは勝手に喋っている
ラディアに貼り付いていたクーネスは、顔をあげ、仕方なくウィンドゥを開く。
スクリーンには眉をつりあげたイーグラが……。
「はぁ。」
クーネスはげんなりした。
大きなため息をついて座り直す。
解放されたラディアも素早く上体を起こして立ち上がる。
「…💦」
「奴に報告することなど何もないだろ。金魚どもは片付けたし、追尾もない。W34Nb03惑星…ああバセンジーか?そこに着くまで、お前もゆっくりすればいい。」
クーネスたち機動艦隊は、突然現れたセイバー小隊と交戦の上、撃退したが、敵軍の追跡を警戒し、わざと遠回りしながらバセンジーへ向かっていた。
『しかし、サバンナをいくつか取り逃がしたし…💦』
「ふん、※オゾンを撒いていたんだ、何の問題もない。しかもこうして念を入れてSRモードで警戒体制中だろうが。」
※伝送抑止妨害波
『ん…ああ。』
納得しないのか、手にするパネルをスライドさせながら、いっこうにウィンドゥを閉じようとしないイーグラ。
「💢まだ、なにかあるのか?」
イラつくクーネス
『ああ…Bパラからの報告書で重大な事実が判明したんだ💦』
「重大?なんだ?」
『それは…』
イーグラはキッとラディアを睨む。
「あ💦」
ラディアは頭を下げて、その場を去ろうとする
「いいのだ。ラディア、お前はどこにもいくな。」
「いいえ💦あの、私は仕事がありますので。」
「何をいってる、もう寝る時間だぞ。」
クーネスがラディアを引き寄せ、押し問答しているド真ん中に、イーグラの刺々しい声が割り込んでくる
『ムカッ!クーネス!大事な話だ!到着までに目を通しておくべき資料もある💦今すぐ、私の部屋へきてもらいたい!』
「また大事な話か!どうせ、くだらんことだろうが?今じゃなきゃダメなのか?」
クーネスがスクリーンに向いて気がそれた 。その隙に、ラディアはさっと腕をすり抜け、逃げ出していく。
「ラディア!」
『着く前に決定しておかなければならない、いくつかの項目があるんだ!💦』
どこか必死なイーグラ。
「はあ!まったく!面倒なっ!では、お前がこい!」
ラディアに逃げられたクーネスは面白く無さそうに酒を煽《あお》る。
『私が?』(///∇///)💦
「ああ。それに酒の相手もしろ!私のくつろぎタイムを邪魔したんだからな、当然だろう?それが嫌なら明日にしろ!」
言いながらワイングラスに残りの酒をつぐ。
イーグラはそんなクーネスをじっと見つめ、
『そういえばイシダシカという上等なブランデーがあるが、それを献上しようか?』
さっきまでの張り詰めた雰囲気はどこかに消え去り、甘ったるい視線を注ぐイーグラ。
クーネスは悪い気はしていないようだ。ニヤリと笑う。
「…気が利くな。イシダシカか…いいだろう、じゃそれを持って早く来るのだ。」
イーグラは嬉しそうに頬を染めてウィンドゥから消えた。
暗い宇宙空間をDAの機動艦隊は静かに進む。
ジワジワとゆっくりだが、確実にバセンジーに迫っていた。