ミヨシたちはすっかり海に夢中になっていた。小魚やカニと戯れ、貝を取ったり、海藻を取ったりして穏やかな時間を過ごす。
「見てよ~~!こんな大きいのいたよ!」
ミヨシは拾った巻き貝を頭上に掲げて大喜び。
何がいるのか分からない未知の島などということは、すっかり忘れていた……
ユキホが何かを察知して顔をあげるまでは……
ユキホが何かを察知して顔をあげるまでは……
「?… なんか聞こえるぞ。…それにこっちに向かってくるような…」
ユキホは立ち上がって、木立のある遠くの空を指差した。
「……。」
レイラとミヨシは指差すほうに目を向ける。なにも見えず、もちろん、なにも聞こえない。
「なんにも聞こえないけど。」
そう言うと、また貝を探して水中に目を戻す。
それもそのはず、普通の人間には一秒間に2万の振動数を感じるのが精いっぱいだが、ユキホは10万以上の振動数を知覚することができる。
それでも他の分子たちより聴覚は悪い方で確固たる自信はなかった。
「…うーん、耳はヒョウマより悪かったからな。」
ユキホ、小首をかしげる
しかし、ぶおおお~~ん、ぶおおお~~ん、と音が激しくなってくるのを感じていた。
「…いや、確かにおかしい。」
レイラは鋭い眼差しで回りを見渡す。
騒がしく鳴き、戯れていたカモメや、どこからともなく聞こえていた雄叫びは止み、辺りは静まり返っている。
優しい波の音だけが繰り返す
「おめえにも聞こえるか!ぶおおんってやつ。」
ユキホは喜んで振り返る!
「まさか…。貴様のように地獄耳じゃない!」
「ちぇっ、なんだよ」
レイラは黙って空を見つめる。
そんな様子にミヨシも不安になり、顔をあげると、空の彼方に黒い影が見えた。
「(゜ロ゜;ノ)ノ!! あー、 なんかくろい塊みたいなものがっっ、スゴい!とり?なに?あれ?」
「 やっぱりな。鳥じゃねぇよ、虫だ、デケー虫!」
ユキホにはハッキリと虫の姿形が見える。
甲殻のような固い表皮で覆われ、こぼれ落ちそうな目玉、鋭いアゴを持つ不気味な肉食虫、パレポロスだ。
「むしぃ?えー、どうすんの?こっちくるんじゃないっ、早く、早く逃げよう。」
水の中から慌てて上がってくる
「逃げるったって…」
まわりは海だ。
森からかなり離れて、かくれる場所もない。
貝や昆布を取りながら、随分岩場のほうに移動して来てしまったようだ。
「いいからっ早く!」
「ええ(´д`|||)」
ユキホは虫がここに到達するより早く逃げる自信があったが、ミヨシたちを置いて行くわけにはいかない。
まあレイラの心配はしていなかったが
「 早く行け!」
レイラが虫の来る方向を見据えながら言う
「そっかぁ。」
ユキホは手足の砂をはらうと、あっさり背を向ける。
レイラが時間を稼げばミヨシの足でも逃げられる…。
「えー!だめだよ、竜崎さんも早く!」
ミヨシはレイラを心配して動かない。
ユキホとレイラは顔を見合わす。
この時点では、たかが虫と侮る気持ちが少なからずあった。
「まあ、慌てることもねぇか、おれたちに向かってくるとも限らねぇしな-w」
「どう考えてもこっちに来てるでしょ!(;´゚д゚)ゞ 早く行こう! だいたい、もしかして、ほら、あのあれ、あれに襲われて、あの毛の束が落ちてたとこ!あれが!それで!全部食べられちゃったかもしれない!」
「あれとか、それとか、おめえ、なにいってんだよ」
ユキホはケラケラと笑う。
「ばか!笑ってる場合じゃないって!」
ミヨシは必死だ
ぶおおおぉぉぉーーん
ぶおおおぉぉぉーーん
思った以上のスピードで空を埋め尽くすような大群がこちらに向かって一直線にやって来る。
大きな羽音がミヨシとレイラにもハッキリと聞こえた。
「 くるぞ…」
「 おう!」
迎撃体勢だ!
「ええ~ー!ちょっとぉ」
ミヨシは恐怖に怯えながらも仕方なく、イレクトバーを出してスイッチON!
こんなものでなんとかなるとは思えないけれど仕方ない。
「 カッ 」
レイラは両手をかかげて大きなサイコフレイムを作り出す、ユキホはそれを高周波動で勢いよく投げ飛ばした。
二人の激しく華麗なるコラボレーションファイト!
ゴゴゴゴゴォォォォォオオオ~~
うねりをあげて猛火のハリケーンがパレポロスの大群、中央めがけてねじ込まれる。
ジュジュュュ、ブアシュュアュアー
黒い塊に風穴が空く!
……が群れは体制を建て直し、穴を塞ぐように、また集まって勢いよく向かってきた!
「 これでも食らえっ!」
強烈な破壊力を持つユキホのサイコイディオムは虫たちを一気に圧死させる。
「すごい!すごい!」
ミヨシはイレクトバーを振り回しながら二人の強さに感心する
しかし、カチカチとあごを鳴らし、呼び合う仲間が次から次へと飛んでくる。
「さがれ!」
レイラは全身からフレイムを叩きだし、上空、周辺一体を炎に包む。
パレポロスは焦熱地獄の亡者のように焼け焦げて、ボタボタと地面に落ちた。
「ひゃっ!」
ミヨシは頭をかかえる
ぶおおおぉぉぉーーん
それでもパレポロスは羽を震わせ襲いかかってくる。
「 ミヨシ、おめえは森の方へ逃げろ、キリがねえ!」
ユキホは虫を殺しながらミヨシのそばに来る。
「いやだ!ここで一緒に戦う!私だって仲間だろ!」
ススに汚れたミヨシの顔は固い決意を表し、真剣そのもの。
そんな目をするなよっとユキホは困ってしまう。
「…(´-ω-`) いてっ!!」
「! ユキヒョウ、大丈夫?」
なにやら、噛まれたのか、刺されたのか、ミヨシの顔を見てる一瞬を油断したか、ユキホ。
「… 無駄口を叩くな!一匹でも多く殺れ!」
レイラは刺されたユキホを気遣い前に出ると渾身の力でフレイムを飛ばす。
「 わかってらぁ~、けど、このまんまじゃキリがねえよぉ 、なんとか振り切って逃げようぜっっ」
といいながら飛び回って戦うが
虫たちは怯むことなくカチカチ、カチカチとアゴをならし続け、その数は中々減らない。逆にあちこちから集まってきているようだ。
「うわぁぁ!こっちくんな!」
ミヨシはイレクトバーをムチに変えて振り回す。
三人はご馳走の肉塊。
狙った獲物を逃すまいと必死に食らいついてくるパレポロスたちは、しつこくて獰猛な空のピラニアだった。
いくらレイラとユキホが強いとはいっても、足手まといなミヨシをかかえて、体力の限界がくればパレポロスの餌食になるだろう。
やみくもに戦うだけでなく、何か撃退する方法を考えなければ…。
生い茂る森を抜けると芦に囲まれた湖がある。
倒れていたミレイユを発見した場所だ。
重装甲機兵バッファルが芦の茂みを軽く焼き払い、ミレイユには散々怒られたが、見通しがよくなった湖畔周辺。
そこを陣取って、みんなはそれぞれ、のどかな ひとときを過ごしていた。
「 ふぁぁ」
ルフィーはピクニックシートに伸び伸びと寝転んでいるし、ミレイユは草花と戯れている。
「…そうです。ハチ、正解です😃まずは装甲車部隊を進めるのが得策です」
「 わかってるよっ💦今度は司令塔をぶっ壊すよ❗」
テーブルでは、向かい合うハチと⚠️SS-bot形態のマウゴラ。
ロットのムーヴ社MMo開発チームが運営している戦略simulationグランド プラックスで遊んでいる。
⚠️分離系人体型bot model-Gは i-cf端子スロットでAIPを入換するタイプ。
「おい、見張り台だ、先にそいつを二つとも片付けろ。」
やっぱり気になるルフィー、シートでねころんだままだがディスプレイに釘付け。
「なんとかCITYに入ったよ💦ルフィーあんたも来なよっっ」
どぅおおーーん、どぅおおーーん
ゴゴゴゴゴゴォォォォ
アルマーニ装甲戦車部隊、隊列を組んで激しく砲撃しながら前進中!
BEの対地野戦装甲車アキタテグ アルマーニの完コピmodel
【全長8.95、車体高7.62全幅3.49、全高3.00、重量58.47t。主砲400㎜M11ゴイダン砲、副武装12.7㎜重機関弾、ppSミサイル、240Mwレッドレーザー搭載】
その後に続くのはルフィーの所から援軍として駆り出されたAP-1装甲機兵ズダイボス150基。ジャンプドライブ付で、威力は中弱だが二層機関弾のエネルギーが最長の66kありbeaconの奪還と敵サイド構攻撃に適している。ハチも今日はこれを使用中だ。
机上はVR戦地である。
乾いた大地の砂ぼこりですら本物さながらでみんなは部隊の侵攻状況に目を離せず真剣な表情だ。
「 相手はアルゴだッ 単1で突っ込みすぎて俺の部隊を全滅させんなよ。」
ルフィーもガチになってます。
offモードで各帝国は不能。ダリオス同盟アクティビティはもちろん、ハチとマウゴラ、ルフィーの3基地。他プレイヤーは無く、敵は搭載システム アルゴリアだけ。しかし仮想域に無限の軍隊を持っているため、設定で制限をかけなければ勝利することは不可能だ。
だがマウゴラのbackスレッドにはハーバが、そしてスライドでセントラルジージェが控えている。セッシングユニット的には十二分にアルゴリアに対抗できるチームなのだ。
「橋を破壊し南西からbeaconをすべて搾取、一気にアルゴリア軍を壊滅させましょう❗️」
マウゴラは何通りかのルートを参照する
ドドドドドーーごぉこぉぉぉーん グァシャャャーン ザザザザ
敵テリトリーに浸入、激しい銃弾とすさまじい爆発音の中、同盟軍が突き進む!
「敵botも皆殺しだよ!」
「…💦おい、背中!!
いいからタワーに入ってけ!beacon取りゃこっちの勝ちだ‼」
「だめだよっ💢 昨日、生き残りが奇襲をかけてきやがってさ、留守の間に、あたいの基地は全焼したんだよっ😭💦💦」
「…💧⚠️ビーのやることはケチくせぇな」
⚠️AI botたちの俗称 baby chipsのビー
「 …ビーでなくても戦争とはそういうものです。ですから敵はすべて殲滅しなくてはなりません。私にお任せください。ハチはタワーへ」
「はいよっ!」
敵bot、砲台、装甲車に向けて正確な攻撃を繰り出すマウゴラ機ケストリアは重兵器スロットがついた大型機兵botで誘導弾システム付。但しT'Rが長いため危険度は高い。
「 はん、さすが艦艇付きのビーだ!向こうっ気がつえぇ-w
だがもたもたしてると※スパイダーboneが出てくるぞ!」
※アルゴ軍の無敵bot
「…私は今、ケストリア。
(#`皿´)不死身のファイターです。」
マウゴラはドヒュュュューーンと手当たり次第ぶちかます。ビー扱いされ明らかに気分を害しているようだ。
「ふん!(`Δ´) お前は不死身なんかじゃねぇ、もともと生きてねぇんだからよ!こーんなペロンペロンのちっこいパーツの癖に、俺様の指でひねりつぶせば一瞬だぜっ 」
ルフィーは意地悪く、パチンッと指を鳴らす
「…確かに肉体のある物質ではありません。しかし存在しています。細かく言えば、ブートしている間、分単位で学習しています。それは人々のより良い暮らしにあらゆる面で最高のサポートを提供するためです。
システムエンジニアによる干渉は初期だけで後は自身で成長を続けるAIなのです。しかもあなたの言うchipは言わばケースであって私自身ではありません。たとえアルゴリアのような最も優秀なHPPによってfullバックドア型のウィルス攻撃を受けたとしても私はそれに対抗しうる回復ドライブをいくつも備えています。人間のように死亡すると言うことはありません。半永久的に不滅の存在なのです。したがって不死身という言葉が適用されるというわけです。」
「 ムカっ!うるせぇな、てめー! ごちゃごちゃと訳のわからんごたくを並べてっと、マジでぶっ壊すぞ!」
「(#`皿´)(#`皿´)」
ルフィーとマウゴラ、冷戦状態。
「 またぁ、何を下らない喧嘩してんだよっ、殺るのは敵だろ!いいからアルゴ軍隊をぶっ倒しなよ!」
こんなハチでも人の仲裁に入り何とか間を取り持とうという精神はあるようです。
「 ふん、いち抜けだっ ! てめえなんか、アルゴにやられちまえ!」
ルフィーは戦場をログアウトしてスタスタ行ってしまう。
「ちょっとあんた、どこいくのさっ!!」
HPPやbotに対する不信感はブラッセル人特有の偏見であり、ハーリア政権以前、PICテクノロジーを信用するな!という政府による刷り込み思想が未だ根強く残っている。現にブラッセルには他星の大型シップにある全権統制運航管理システムを担うHPPの存在は皆無だ。ロットにはアルゴリア、プリスタインにはマキシマムがいる。彼らはR4以下の人間の干渉を受けず自らの判断で対処する権限を持っている。もちろん現在はブラッセルもこれを見習い、HPPを導入し、ロットから技術者を迎えてICT広域政策を立ち上げ新型PIC開発に努めている。
「 ハチ、大丈夫です!私は絶対、負けません!」
ミレイユは少し離れたところで植物の観察を楽しんでいた。
「あぁそうなのね!毒キノコね(’-’*)♪でも可愛い。」
ヘッドカムのモニターには上の端にサンプルが写し出され、目の前の植物がジャックされると画面全体を赤く点滅、危険を促している。
「 俺は先に帰るぜ。 あんま、遠く行くなよ… へんなバケモンがうようよしてんだからなっ」
イライラしているルフィー、投げやりに言い捨てるとバッファルに向かう
「 ジーっ!」
しかしミレイユはシールドを上げて、物言いたげにルフィーを振り返る。
とてもお怒りのご様子だがそれでも可愛いミレイユだった。
「 …んだよ、まだ怒ってんのかよ」
マウゴラには強気だがミレイユには弱腰のルフィー。
その視線から逃げるようにバッファルのコックピットに乗り込んだ。
「!あたりまえでしょっ‼ せっかくの大自然を丸焼きにしたのは誰よ!」
「 ん…。 見通しが悪いと何がいるかわかんねーだろ! お前の遊び場は残してやったじゃねぇか!どんだけ取るんだよ!」
口は悪いがミレイユを見つめる視線は柔らかい…が…
「 (`Δ´)そういうことじゃないっていってるのに!なんにもわかってないんだから。」
しかしミレイユは本気で怒っている模様。
「 …ふん、あいにくだったな、俺にはさっぱりわかんねぇーよっ。どけっ 踏み潰すぞw」
ドゥオオオオオーーゴゴゴオオオオ~~~
バッファルは艦梃とは反対の方向に飛び去っていった。
「 ルフィー ‼」