二人は眼下にパールビーチが見渡せる高台にいた
「ユキホ! クジラの群れよ~ 」
巨大なルクピリオスたちが波を操り、渦を作りながら、泳ぐ姿が見える
岩壁の先から 指差すミレイユ
ユキホも、険しく切り立つ大岩の上にあぐらをかいて、広い海を眺めていた
「 ……。あれ、一匹食えるくらい腹立った 」
「ふふ、ユキホったら-w 」
爽やかな潮風に包まれ、ミレイユの髪がなびいている
そこは、穏やかな空と海の狭間
「…もう、平気? みんなのとこに帰れる? 」フラワー神殿で待ち合わせよ
「 うん、ごめんよ、キリコ 」
「 ユキホ…、感情をちゃんとコントロールして! 征弄じゃないからこそ、関係のない人をキズつけたり、何かを壊したりしてはいけないわ! 」
「 …… うん 」
素直に頷いたが、
遠くを見る目は まだ ギラギラと燃えていた
“ 作品じゃない! ”
“ バケモノじゃない! ”
黙っているが ユキホの思想が、ミレイユの頭の中に流れ込んできて、
とても 心が痛かった
「 …ユキホ 」
ミレイユは駆け寄って ぎゅっと ユキホを抱きしめる
「 私たちはずっと一緒… ヒョウマもあなたも 私の大切な家族…いつまでも、ずっと 一緒よ 」
「…… 。 うん 」
抱きしめられたまま、じっと大人しくしている
深い愛に包まれて、ユキホの心は穏やかなものに変わってゆくのであった
「ここは、ナミアンの最古の神殿と言われてるわ! 岩に巻かれた聖なる鉄枷《てつかせ》で母神を留まらせているんですって!
我々は、これから益々 激しい戦いが続くのよ! 今、この強力な霊場で、イザルナミアンのご加護を賜り、 ブラッセルの勝利と栄光を!
帝国の永劫的繁栄を!
心から祈願するのよぉぉ!」
スズカは、仁王立ちで叫ぶ!
「 いや~‼️ この巌立《がんだて》は、 なんだか恐怖心を引き立たせますね💦 」
カメラを回しながら、スプラは辺り一帯を眺めまわす
「あたいは、スズカのが よっぽど怖いよ -w」
「 (^。^;) ブラッセル人より、ブラッセル人ぽいです~ 」
顔を強張らせ、唾を飛ばして喚いているスズカを、苦笑いで見つめるハチとラディア
「 さぁ!レオン、先達《せんだつ》よ! 拝礼と奉納を! ラディア、神饌《しんせん》を準備して! 」
「💦 はい! 」
慌ててラディアは走ってゆく
「 えー?! この岩壁に?」
見上げるレオンの横で、手を振り、全員に整列を促すスズカ
「みんなも早く!」
ルフィーは嫌な表情
「 ナミアンの像もねぇのに、こんな鎖の岩に誓願《せいがん》する意味あんのかよ 」
フラワーホールは、母神イザルナミアンの墓 、とも云われる最古の神殿であり、壁の如く聳《そび》える巖《いわや》全体が分厚い鎖で覆われ、ご神体として祀られている…
ナミアンの最強の武器であり、自身が纏《まと》う 漆黒の鎖鎌は、 抗《あらが》う者を叩きのめし、次々と 地獄の山洞に引きずり込み、 二度と出ることを許さないという恐ろしい呪縛力を持つ! ブラッセルでは、恐怖を司る戦いの女神として崇め奉られてきた
「 御贄《みにえ》のお供えをさせていただきます、ご無礼のほど、お許しくださいませ… 」
ラディアが すごすごと、奉納の御膳を運び、神前へと並べる、
礼拝式典にのっとり、レオンは地面に膝をついた。
「 どうか、この奉納を受け入れ、祈念を聞き入れたまえ! 」
辺りに その声は響きわたる
ルフィーたちも、厳かに レオンの後ろに並んだ
オース《懐刀》を引抜き、ためらいなく、手のひらを切るレオン。
ルフィー以下、部隊兵のスキャルバ、エップ、ハチ、レイラ、そしてスズカは同様に 膝をついて、手のひらを切ると、グッと強く握りしめ 同じように その血をナミアンの大地に吸わせた
「 我らが、ここに 母神の忠実なる僕《しもべ》である証を示す!
ことごとく 打ち砕きし、敵の血と肉と骨のすべてを捧げ、神器を満たす供物として 献上することを誓うだろう!
この奏上をもって、我らへ!
ナミアンの 加護の光と金剛不滅の力を与えたまえ!
全軍を勝利へと導き与えたまえ!」
レオンは深々と頭を下げる
“ 加護の光と金剛不滅の力を与えたまえ! 全軍を勝利へと導きたまえ! ”
ビシッ!!
皆も鋭く復唱すると、左手を土に浸け、右手は己の心臓を二度 叩き、敬礼すると 誓願の儀を果たした
「 ひゅーー! 恐ろしいブラッセル軍の礼拝の儀ですよ~~ 」
張り詰めた空気の中、その様子を、突っ立って撮影するスプラ、その袖をラディアは引っ張った
「 座ってください💦 スプラさん 」
「 ラディアさんは、やらないんですか? 」
ニコニコして、手を切る仕草をして見せる
ラディアは、慌てて しーっと、唇に指をあてた
代わりにクレインが吐き捨てるように口を開く
「 DAのマイラー〔非戦闘員〕はオースを持ってないわ! だいいち、血杯《けっぱい》の拝礼なんて、時代遅れの風習! それを続けるのは、進軍の故老《ころう》将軍たちと、その配下だけっ 💢 」
「 おかしいわね~、紛れもなく貴女も その配下だけども-w 」
立ち上がると 微笑むレオンを、睨むクレイン。
そこへ割り込むように、興奮したスズカが駆け寄った
「 素晴らしかったわ~~✨
レオン、厳かで神秘的、周辺は 女神の気が漂っていたわよ、きっとナミアンはお慶びだわ❗️ 」
「 そうだといいけど! さぁ!
お昼ご飯食べに行きましょう✨
そして、やっと 私たちも パールビーチでリゾート バケーションね!🎶 」
「 ヒャッハハハーーい!! やったぜぃ! 」
「 それよ!それ! バケーショーンよぉーーーん 💕」
レオンたちが子供のようにはしゃいでいるが、スズカの軍人魂は炸裂する
「 ダメダメ!! パールビーチなんて戻ってる暇はないわよ! この神殿前の海岸にだって、行かなくちゃならないし💢 」
「 💦 え~~! なんでよぉ!
もぉ~、いつになったら、あたしの可愛すぎる水着姿が お披露目できるっていうのよぉ~ 全宇宙が待ってるのよぉ~~💦 」
身をよじるエップ
「 何を言ってるの! 誰もそんなの期待してないわ!! 」まったく💨
「なんでぇぇ、ひどぉーい!!
あたしのファンタスティックバティに、熱狂ファンたちが、もう、トロけちゃってぇ、どうしようって~~✨
みんな待ってるのよぉ~~ 💦 」
「 バカね! みんなが待ってるのは、うちの大将! 可憐すぎるレオン閣下が、水着姿になることに決まってるじゃないの!💢 でも ダメよ!いいのよ! ミレイユが 昨日、安っぽい裸体を晒《さら》して 脱いどいたんだし、ふん!それで もう 以上 終わりよ! なんていうの? 私的には、ミレイユなんか 人気ですって? 全く理解できませんけどね!💢 」
なんとしてもレオンの水着姿をガオウに撮らせたくないという、悪意あるスズカの裏工作か!!
「 あたしもぉ~、そこは同感ね~😁 ナンバーワンは、いつも!
あ~た~し~👍 」
そんなことを ごちゃごちゃと ぬかしているスズカとエップをよそに、みんなは どんどん ロッククリフのタクトフル茶屋に向かうのだっ!
「 ふぅ💨 」
クレインはレイラをも凌《しの》ぐ不機嫌な表情で歩く
「 お前はなぜ、祈らなかった… 」
珍しく声をかけるレイラに、ムッとして振り返る
「 あなたはっ! フォリナなのに、あれに違和感は感じないのか?💢」
「…? 今は、ここが私の準ずる場所だ 」
「 💦 その言葉は、ブラッセル人として、とても光栄で 嬉しいけど💦
敵とはいえ、人の命を贄《にえ》にして、祈願するなんて あってはならない事だ!そう思わない?」
「 もし、それが機構の在り方なら、私は、それに従い、なんの疑問もいだかないだろう お前は なぜ、 」
「リュウ、やめとけ 」
もっと怒らすだけだ 😁
ルフィーがレイラの肩に手をやる
「 …。」
「 💢 私は! それが どんなに務めと言われてもっ! そんなことはしたくない! どけっ ルフィー 」(`Δ´)
ルフィーを押し退け、クレインは行ってしまう
後に残った二人は タバコに火をつけ、ゆっくりと進む
「 …あいつは、パラ公に なんか吹き込まれてから、やたら 訳わかんねぇことをぬかすようになったからなぁ💦 」前から、ちょっと変わってたが あそこまでじゃなかったよな?
「 お前は クレインをどう思う? 」
レイラは、チラッとルフィーを見る
「 へ?」
そのフレーズって…とルフィーは、一瞬ドキッとするが
「 おれは、これといって💦」
「 やつの言い分を、聞いてみる気はないのか?」
「 ああ💦 権利だの平等だのってあれか? 頭がイカれたか、パラ公にでもなったかと思ったぜ! 今だって、そうだろ? 何を言おうと絶対 無理だ、こういう事で、二度と話したくねぇのが本音だな 」
ルフィーは苦い顔でタバコの煙を吐くと 続ける
「 オレだって別に、祈願なんて必要ねぇよ。 フィールドじゃ 自分を信じて とにかく、 一匹でも多く殺るだけだ! そうだろ? リュウ 」
「 …。ああ 確かに 」
戦場でやることは一つ、それについては同意見だが、私が言いたかったのは…クレインが決して 口にしない言い分について…だが
揺れる木立の枝から、流れる雲に向かって 飛び立つ鳥たちの姿
それを 目で追うレイラ
「 ふっ、余計なお世話だな… 」