②ソルジャー
「あんな無茶して!お前はBotじゃないんだぞ!毎回 生きて帰れると思うな!」
ランドラで行われた聴聞会の後、すぐに待っていたのはクレインの爆裂した説教だった。
(だが…オレはこうして生きてる…Botっうか、死神だな)
「おい、ルフィー、聞いてるのか?」
ルフィーは、げんなりした。
「…聞いてるわけねぇだろ。ムカついてんだ、少しだまってろっ。」
しかし、クレインが黙るわけはなかった。
「(`Δ´)だいたい旗艦ごときでチームを全滅させるなんて怠慢だぞ!ああいう場合、さっさと撤退するのが得策なんだ!3部隊も率いるリーダーがそんな判断も出来ないようじゃどうしようもないだろう!」
ルフィーは服をつかまれ強く揺さぶられる。
心配しすぎたクレインの気持ちは収まりようのない怒りに変わっていた。
「…ふん、さわんな。」
きっと、いつものルフィーなら食ってかかって反撃したはずだが、軽く振り払い、苦味渋った顔を向けるだけ、それもすぐに目をそらした。
「ルフィー!いいか!お前があんな真似をすれば、隊員たちだって後に続く!R² Oだって、大破だ!大破!もう直せないし、死んだ人間も帰ってこないんだからな!!」
クレインはルフィーの腕をもう一度掴む。
「チッ」
ルフィーは舌打ちして、クレインを睨むが、やはり言い返そうとはしなかった。
「おい、おい、クレイン!ちょっとまてよ」
見かねたラウガは二人の間に割って入る。
おかげで、解放されたルフィーは、ラウガに親指を示し、その場をとっとと逃げ去った。
____
「ふぅ〜っ 」
ラウンジのソファーに腰を下ろす。
ふんぞり返って偉そうに振る舞うのは凹んでいるのを悟られまいとしているのか…
「どこにいっても人気者ね!」
離れたところで様子を見ていたレオンは、ドリンクホルダーにカップを二つ差し、それを持って隣にくる。
「お前のリンク〔結婚相手〕だろ!ギャンギャンうるせぇから、つないどけよ」
笑いながら、渡されたカップに口をつける。
レオンもクスッと笑う。
「無理よ、彼女、首輪が嫌いだもの。美味しいでしょ?オースフィッシュティよ」
オースフィッシュは、レオンのお気に入りのお酒
ルフィーはそれをガっと飲み干して、カップを握りつぶす
「あぁ~~!くそ!思い出すと腹立って死にそうだぜ!」
必死に戦い、愛機も部隊も失ったが 聴聞会では腰抜けと罵倒され、非難を浴び 責任を問われ、挙げ句の果てに手柄はすべてD編特殊戦隊に持っていかれたのだ。
「ふふ!嫌なことは早く忘れるのね。 アホ司令官の代わりはいてもエースストライカー、ルフィー・オリジンの代わりはいないわ。貴方は有能な兵士、総局もそれはよく分かってる、相当処分だから大したことないわよ 」
もちろん、レオンがしっかり手を回していた。
外務局局長の令嬢であり、親衛艦隊所属の優秀な参謀官、幼さの残る少女だが、大きな戦略プランニングを幾つもこなしてきたエリート将校、私兵L&P部隊も所有している。
ソファーに反り返って、天井を見つめていたルフィーはムクッと起き上がる!
「そう、オレはいつだって、ビーストしてんだ!死ぬことなんて怖くねぇっ、命令されりゃメイジャーだってクマールだって墜としにいってやる!!!」
いつものセリフだ。
興奮してソファーをガシガシ殴る。
「クマールいいわね!目障りだから早く潰したいわ。恒星デストロ246は、破壊力は目標の1200バーレルを越えるものだけど、いつも飛距離でつまずくでしょ。だからスピアヘッド〔先鋒〕が苦労するのよ。それが解決したら名実ともに宇宙一ね!しかも売れるわね~、マスト〔武器市場〕が賑わう❤」
一人楽しそうなレオンを見て、ため息混じりにルフィーも微笑む
「…楽しそうでいいな-w」
「あなたもしばらくは前線のことなんて忘れてL&Pで羽を伸ばすといいわ。今回のE424星については探査というより地域包括調査、リゾートだもの(’-’*)♪ きっと楽しい旅になるわよ」
「リゾート?」
そんなものからは縁遠いルフィー、頭の中は?がいっぱいだ。
「その後は惑星探査に出陣よ!これを成功させれば、レオンはロットから高い評価を受けて、パラメールの商務流通とactiveファンドを任されることになるかも。そうしたらクレインが騒いでる理想論も何か叶えてあげられるかもしれないわ」
気に食わないと言いながらも、何だかんだ、いつもクレインを気にしているんです。レオンは婚約者思いの愛らしい女の子😊
「出世と金儲けだけじゃねぇってか?-w」
「そうよ!プロジェクトはミレイユたちの星を探すのにも役立つわ!…貴方は帰ってほしくないかもしれないけど」
「んなことねぇよ。別に…」
そっぽをむくルフィーをレオンはじっと覗き込む…
「…でも簡単に見つかるとしたら、近い星系ということだから、行き来することも容易だわ」
そうしたら、またその星でも商売をしようという魂胆だろう。
「ああ💦 どっちにしても、フォリナ(異星人)はいつまでもいねぇ方がいい 」
ブラッセルをこよなく愛するルフィーだが、お世辞でも住み心地のよい国とは言えないようだ。
「そうね、明日どうなるか、なんて誰にも分からない 」
窓の外に目を向けるレオン。
このファーストビルから見える景色はどこまでも続く軍事施設と演習場の緑、そして遠くの巨大エアポート。
沈みかけた夕日がまるで儚げな少女のようにレオンを演出する。
「まぁな、でも俺たち高射隊とデルタ兵がいりゃ怖いもんなしだぜ!」
ルフィーはレオンを包み込むようにキラキラと目を輝かす
「ええ!惑星探査も遠征と同じで危険がいっぱい。頼りにしてるわ。レオンね、フィールドのルフィー、大好きなの!輝いてるもの!」
細い両腕を伸ばしてルフィーの首に巻き付いた。
レオンにはルフィーが生きた凶器というより、動く金塊に見えるようだ、スリスリしている。
ルフィーのほうも誉められて気分がいい。その上、美少女の抱擁は悪くない。まあ多分、夕日の効果だろう。普段のように押し退けるということもなく、逆にレオンの背中に手を回した。
「わかってんじゃねぇか!レオン。あの地獄の花が咲く場所で 爆音に包まれるとな…オレは生きてるって感じる…」
ルフィーは目を閉じて静かに開いた。
「ゾクゾクするんだ、最高だぜ。その時オレは他のことは何も考えねぇ、何もかも忘れられる 」
(ミレイユ…お前のことも )
ふっとミレイユの可愛い笑顔が脳裏に浮かぶ…すると、あれこれ あれこれと考えてしまう…。止まらない
レオンが急に身体《からだ》を離して、じっとルフィーを見つめる。
「私もね!戦略を練るとき、駒を動かすとき、ゾクゾクするわ!覗き見も好き!戦場を見るのも好き!人の葛藤、激情、不安、恐怖、実体の無いモノを覗き見するのはたまらないわ。それこそ生命《いのち》の息吹よね 」
黒伝のバケモノ黒面貘のようなレオン。
すべてを見透かすような その表情にルフィーは恐怖を覚え、寒気すら感じる。
「オレもヤバいけど、お前もかなりヤバいな…💧」
「うふふ❤️」
ぐいっとオースフィッシュティを飲み干したレオンの笑顔はいつもの愛くるしい少女のそれだった。